店員さんを呼んでカードを渡してやらしてもらう。

少しドキドキしながら動かし、1番手前のとれそうなところを狙ってみる。
アームはぬいぐるみから少しズレてしまい、ちょっと動いただけで終わってしまった。

「あーあ」
「おしいー! 私もこれしてみるよー。私もこれでお願いします」
なっちゃんが店員さんにいってくれて、同じように挑戦してみてくれる。
「あーだめだ!」
なっちゃんもアームの位置がうまくいかず、落とせなかった。

「俺もこれします」
何も言わず見ていた秋山はそういうと、店員さんにカードを渡す。
秋山は慣れた手つきで手元もみずに操作をし、あっさりと手前のふわうさを取った。

「え!秋山すご!」
思わず感嘆の声を上げた私に、秋山は受け取り口からとったふわうさを私に差し出した。
「え?」
「やるよ。欲しかったんだろ?」
「いいの?」
「俺別にいらないし」
「あ、ありがとう」
両手でふわうさを受け取った私は、かわいくて色々な角度からみてしまう。

「よかったね、実咲ちゃん」
なっちゃんが後ろからひょいとわたしをのぞきこんで笑う。
「え、あ、なっちゃんはいらないの?」
”いい感じ"であると誤解されているのを思い出し、なんとかしようと思って出た言葉だったが、なっちゃんはあっさり首を振る。
「いいよ。秋山、すごい上手だねー」
「弟が好きでよく一緒にやってるから」
「な、なっちゃんも秋山になんかとってもらえば?」
「私はいいやー。特に欲しいもんないし。バスの時間もあるし」
私に出来る渾身のパスもあっさりとかわされ、秋山にじろりと睨まれるだけで終わった。

帰りのバスは後ろに並んで座れた。
本当は私が窓際に行って寝たフリとかできればよかったんだけど、なっちゃんが車酔いするタイプだから窓際に座ってもらった。
なっちゃんの横をさりげなくすすめたけど、座れといわれて、結局私、秋山の順で座った。
動き出してしばらくすると、なっちゃんは眠ってしまった。