きっかけがなんだったのかなんて、わからない。
それはある日、突然始まっていたのだから。

「春川さーん」
甲高いバカにしたような呼び方はいつも私の肩を震わせる。
固まった私になんて気づきもせず、冬海(ふゆみ)さんは私の顔をのぞきこんでにっこりと笑いかけた。
「今日の掃除当番、春川さんだけでお願いしてもいい? 用事があってさー」
「え、あ、でも」
「よろしくねー」
冬海さんは私の返事なんて聞くわけもなく、そのまま自分のグループに戻っていく。
グループの女子の穂高さんと中瀬さんは、冬海さんが戻るとくすくす笑いながらさいてーいといっていた。

拳をぎゅっと握りしめる。
心がざわざわする。
何度こんな風に扱われても慣れない。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。

冬海さんたちに馬鹿にされるようになったのは、ここ一ヶ月くらいの話だった。
それまではふつうに話していて、掃除当番もグチグチいいながらしていたのに。
突然ヒソヒソ話をされるようになって、声をかけても無視されるようになった。
クラスのカースト上位の冬海さんに嫌われると、ほかの女子も私によそよそしくなった。 
私が話しかけると迷惑そうな顔をされ、そうそうに会話をきりあげられてしまう。
そうして私は、あっという間に一人になった。

そうなると当然、学校になんて行きたくないってなるけど。
仮病なんかで学校を休んだこともない真面目でな私がどうやって休めばいいのかわからないまま毎日を耐えるように過ごしていた。

だから私は、このクラスが早く終わってくれることを祈りながら、毎日を過ごしていくしかなかった。
幸い、もうクリスマスも間近で、このクラスも残り三ヶ月だし。

私はそうやって心を割り切るしかできなかった。