シンプル過ぎるか…いや、これくらいがちょうどいいかな。

目の前の姿見に映っているのは、紺色のベストに白のシャツ、チェック柄のスキニーパンツを身に着けている私の姿だ。

期間限定の結婚生活が始まって1週間、牛島さんの父親に会いに行く日を迎えた。

「ハデなのは印象に問われるよな」

これでいいかと姿見の中の自分に言い聞かせていたら、コンコンと部屋のドアをたたく音が聞こえた。

「どうぞ」

私が声をかけると、牛島さんが顔を出した。

「もうそろそろ出るぞ」

そう言ってきた牛島さんに、
「わかった、今すぐに出るから」

私は返事をすると、テーブルのうえに置いてあるカバンを手に持った。

最後にもう1度だけ姿見の中の自分を確認すると、部屋を後にしたのだった。