父親と血が繋がっていないことを知ったのは、小学校に進学する少し前だったと思う。

「出て行った奥様と浮気相手との間にできた子供を育てているなんて、旦那様の心境がわかりませんわね」

手入れが行き届いている広い庭を通りかかった時、そこで掃除をしていた使用人たちの会話を耳にした。

「とは言え、後継者がいないのは財閥としては大問題ですからね」

「私が聞いた話だと、出て行った奥様には結婚前からおつきあいをされていた方がいたとかで…坊っちゃんは、その人との間にできた子供だとか」

とっさに物陰に隠れた自分を、当たり前だが彼らは気づいていない。

(ーー僕は、お父さんの本当の子供じゃないんだ…)

まだ幼かったけれど、自分は父親と血が繋がっていないことを理解した。