「今日のホームルームは後期の委員決めをします。」
僕たちのクラス、2年5組の担任である藤倉先生がそう言うと、自分たちがこのクラスの代表とでも勘違いしていそうな女子の集団がそろって愚痴を言いはじめた。
「静かにしなさい。あとは早乙女頼んだぞ。」
そういって先生は教室を後にした。早乙女さんは少し動揺しながら黒板の前に立った。
「えっと…じゃあ、まずは学級委員長から決めます。なりたい人…いるかな、、」
さっきまで喧騒としていた教室は、もうなかった。誰もが口を紡ぎ、他人事のように聞こえていないふりをした。僕もその1人だった。
「はいはいはーい!」
静寂を断ち切ったのは、このクラスのいわゆる一軍のリーダー藤原美香だった。
「決めるのめんどくさいし、また早乙女さんが学級委員長してよ〜!だって、早乙女さん目立ちたがり屋でしょ?」
笑いながら適当に早乙女さんに押し付けようとする藤原さんと、それを周りで笑っている藤原さんの仲間に腹が立った。それは、彼女たちにとっては当たり前の光景で、僕にとっては、ありえない光景だった。僕が腹を立てる以上に、早乙女さんはダメージを受けていた。見間違いで無ければ早乙女さんの肩は少し震えている気がした。
「もぉ〜やめてよー目立ちたがり屋なんかじゃないよ!みんながやらないから仕方なくしてるだけ。もし、このまま立候補する人がいなかったら後期も私がするよ。」
早乙女さんは何も気にしていないかのように振る舞っていた。でも僕は、早乙女さんの異変に気づいてしまったから。だから、傷付いたのだと分かった。でも弱いから、怖いから、僕は見て見ぬふりをした。