いくら手伝いをしても“ありがとう”は言われることなく毎日が過ぎていた。家にいても私の居場所は無い気がした。私は家族じゃなくてお手伝いさんみたいだった。けれど、弟たちがいなかったあの頃みたいに、お母さんに褒めてほしかった。
 褒めてもらうために、思いついたのが勉強だったた。家の手伝いを終えたあと、寝る間も惜しんで予習・復習するようにした。正直手伝いと勉強の両立は苦しかった。けれど、成績が伸びたら褒めてもらえるはず。その一心で頑張った。もともと学年順位で6位と悪くなかったけれど、上位5人の弱点を探して、徹底的に勉強した。その努力が実り、次の次のテストで全教科で2位にまで上り詰めることが出来た。すぐに、お母さんに報告した。
「おめでとう。次、順位が落ちないようにがんばれ」
ただ悲しかった。おめでとうの次の言葉は、いらなかったし、『頑張ったね』と褒めてほしかった。それでも勉強は続けた。