高校2年生の冬。
 住んでいる街の近くにある小さな街の雪景色を撮りたくなって、朝から電車に乗った。

 お客さんは本を読んでいる男の人と小さな女の子とお母さん、そして私だけ。電車の窓から見える外の景色は、真っ白。

 雪は止んでいた。

 30分ぐらい経つと街に着いた。
 電車から降りると視界びっしりになる程に雪が沢山降っていた。

――天気予報、ずっと曇りじゃなかったっけ?

 駅のプラットホームの屋根の下で雪をしのごうとした。でもここの屋根は小さくて、ほとんどの雪は風に乗り私の元へ流れてくる。

 どうしようかな?と考えながらなんとなく向かいのホームを眺めていると、懐かしい彼の顔が、降っている雪の隙間から一瞬ちらりと見えた気がした。懐かしいと言っても中学校は同じだったからそんなに懐かしくはないのかもしれない。それに、しょっちゅう彼の姿が私の頭の中に浮かんでいたし。

 彼の名前は平野奏汰(ひらのかなた)くん。

 彼と知り合ったのは幼稚園だった。

 小学校卒業するまでは遊んだり話したりしていたのだけど、中学に入ると自然と話さなくなっていった。そして高校は別々のところへ。

 実は彼、平野くんは私の初恋の人。

 好みの漫画が一緒で、私の好きそうな漫画を見つけると教えてくれたり。他にも色々私のことを気にかけてくれたりして、すごく優しかった。そして名前をいっぱい呼んでくれた。

 小春ちゃん、小春ちゃんって……。

 名前を呼ばれるだけで嬉しかったな。いつの間にか苗字で呼ばれるようになっていったけれど。

 一瞬見えただけでもう見えないから、気のせいだったのかな?