し・つ・こーいっ!!


 あの日以来、あたしはなぜかウワサの柊先輩につきまとわれている。

 朝とか、帰りとか、休み時間まで、どこからともなく湧いて出てくるみたいに、気づいたらすぐそばにいて、

「今日、Mスタにsumokkaが出るって知ってる?」

「ボーカルの片桐さんのエッセー読んだ? もしまだだったら、貸してあげよっか?」

 とかなんとかずーっと話しかけてくるんだ。


 間違っても、柊先輩と仲がいいだなんて思われるわけにはいかない。

 そんなことになったら、あたしの平穏無事な中学校生活は終わってしまう。

 だから、あたしはできるだけそっけない感じで、柊先輩には一切興味なんかありませんよーっていうスタンスを貫いているつもり……なのに、肝心の柊先輩には、全然伝わってないみたい。


「あのっ! ……もう、あたしに近づかないでもらえませんか?」

 周囲に誰もいなくなった廊下の突き当りで、あたしは思いきって柊先輩に言った。

「ごめん。ちょっとしつこくしすぎちゃったかな。sumokkaファン仲間ができてついうれしくてさ」

 柊先輩が、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「いえ、しつこかったっていうか……」