ほら、真帆でさえ名前すら覚えてくれてないんだもん。

 だから、あのあたしの鼻歌だけでsumokkaだってわかってくれるだなんて、あたしにとっては本当に奇跡みたいな出来事だったんだよ。

 だから、sumokkaファン同士、これからも情報交換したりして仲よくできればなって思ってたところだったんだけど。


 そっか。そんなに柊先輩って有名人だったんだ。

 たしかに、あのビジュアルだもんね。

 みんなが放っておくわけないか。


 だったら、もう柊先輩には近づかないようにしなくっちゃ。

 だって、そんな目立つ人に近づいたって、いいことなんてなにひとつないんだから。

 自分が惨めな思いをするだけ。


『葵様と似ても似つかない』

『なんであんな地味な子が葵様の妹なわけ?』


 こんな陰口を、正直飽きるほど聞かされてきた。

 ただでさえ美人で成績優秀なお姉ちゃんと比べられてばかりなのに、そんな思い、これ以上したいわけないよ。


 ……せっかくできた貴重なsumokka仲間だったのにな。

 気づいたら、あたしは小さなため息を吐いていた。