アンバランスなあたしたち

 静かに歌い終わると、拍手とともに指笛が聞こえてくる。

 あたしがぺこりと観客席に向かって頭を下げると、なぜか柊先輩があたしの方に歩み寄ってきた。


「え、ちょ……どうしたんですか?」

 小声で柊先輩に尋ねてみたけど、返事がない。


 そのまま無言であたしの真横までやってくると、柊先輩は足を止めた。


「な、なにやってるんですか!?」

 柊先輩が、おもむろに髭と真っ赤な帽子を脱ぐと、観客席から悲鳴が湧き起こる。


「柊くんだよ!! ウソ、信じられない」

「ピアノだけじゃなくて、ギターも弾けるなんて、カッコよすぎなんですけど」

 興奮した声がわっと上がる。


「茜ちゃん」

 柊先輩が、あたしをまっすぐに見つめてくる。

「さっきは、ちゃんと答えられなくてごめん」

 あたしは、無言のまま首を左右に振って見せた。

「多分、図星を突かれて、なにも言い返せなかったんだと思う」

 そう言うと、柊先輩は恥ずかしそうな笑みを浮かべた。

「茜ちゃんが、僕のピアノを楽しみにしてくれるっていうのなら——もう一度がんばってみようと思う」

「柊先輩……」