アンバランスなあたしたち

 大変な世界なんだろうなっていうことは、なんとなく想像できる。

 柊先輩が目一杯やっても二位にしか届かなかったんだから。

 ほんの一握りの人しか辿り着けない、プロの世界。


 でも柊先輩、本当はもう一度戻りたいんじゃないですか?


 だから、音楽から離れられずにいるんじゃないんですか?


「柊先輩の同好会卒業公演、精一杯がんばりましょうねっ」


 今は、とにかく笑顔で。

 あたしは、柊先輩に向かって、コスプレ用のサンタの真っ白な髭と真っ赤な帽子を差し出した。

 その髭と帽子を、柊先輩は黙って受け取り、身に着ける。


「いい歌声頼んだよ、赤鼻のトナカイさん」

「はいっ。おまかせください」

 トナカイの角のカチューシャと赤鼻を装着すると、あたしは柊先輩に向かってびしっと敬礼して見せた。