午後になり、文化部のステージ発表会がはじまった。

 あたしたちの出番は、最後から二番目。

 今は、あたしたちのひとつ前の演劇部の発表中だ。


 舞台袖で柊先輩と落ち合うと、お互い曖昧な笑みを交わす。

 なんだか、今までになく気まずい……。


「……柊先輩のピアノ、はじめて聞きました」

「そういえば、そうだったね」

 思いきって絞り出した言葉に、柊先輩がそっけなく返す。

「あの……こんなことあたしが言える立場じゃないってわかってます。けど……」

「だったら言わなくていいよ」


 そう、だけど。


「でも、あえて言わせてください。柊先輩、本当はピアノ、大好きですよね?」

「ピアノは、二年前にやめたよ」

「そうかもしれませんけど。でも……」


 そっか。さっきの涙はきっと——。


「柊先輩。このステージ発表会で、同好会の活動は最後にしませんか? ……ううん。最後にしてください」

「どうしてそんなことを言うの?」

 柊先輩が悲しげな表情を浮かべる。

「だって、あたし、もっと聴きたいんです。柊先輩のピアノ。だから……」

「……」