アンバランスなあたしたち

 テレビをつけると、いきなりピアノの音が大音量で流れはじめた。

 違う違う! この局じゃないよ!

 慌てて番組を変えようとして——ぴたりと手が止まる。


 世界各国を回っていた日本人ピアニストの凱旋公演、だって。


 ピアノにそんなに詳しいわけじゃないけど……なんていうか、画面を通してぐわぁっと迫ってくるような迫力のある演奏だ。

 体全体を使って音楽を表現しているのがひしひしと伝わってくる。


「すごい……」


 チャンネルを変えるのも忘れて、思わず見入ってしまう。


 樫木誠一郎さん……っていうんだ。


 って、え、ちょっと待って。

 ひょっとして……樫木柊先輩の、お父さん……?


『うちの家族、クラシックしか音楽って認めてないとこがあるからさ』って言ったときの、柊先輩の寂しそうな表情をまた思い出す。


 こんなに凄い人がお父さんだったんだ。

 だからあのとき、あんなことを?

 ひょっとしたら、あのときの言葉は、自分にも言い聞かせていたの……?