「……これ、あげる。この前仕事のときにもらったんだけど、わたし行く暇ないから。友だちとでも行ってくれば?」

 目の前に差し出された二枚のチケットを、あたしは恐る恐る受け取った。

「スイーツバイキング?」

 柊先輩を誘ったら、すっごく喜びそうなのに。

「おね……」

 顔を上げたときには、すでにお姉ちゃんはリビングから出ていこうとしていた。

「ありがとう、お姉ちゃん!」

 あたしが大きな声で言うのと同時に、バタンとリビングのドアが閉められた。


 でも、どうしよう、これ。

 真帆と行く?


 でも……誘ったら絶対に喜ぶよね、柊先輩。

 でも、さすがに一緒に行くっていうのは、違う気がするし……。

 それこそ柊先輩が浮気したとでもお姉ちゃんに思われたら大変だよ。


 ……そっか。だったら、柊先輩に誰か友だちを誘って行ってもらえばいいんだ。


 柊先輩が喜ぶ顔を想像したら、なんだかあたしまで口元が緩んで、ふふっと笑みがこぼれた。