「同好会の設立許可が、やっと下りたらしいよ」
そう柊先輩に連絡をもらったのは、申請から約一ヶ月後の11月も半ばを過ぎた頃のことだった。
本当は、四月の一週目までに申請しなくちゃいけないところを、生徒会長権限で無理やりねじ込んでくれたみたい。
そこまでしてくれなくても全然よかったのに……って思ったっていうのは、柊先輩にはヒミツ。
だって柊先輩、本当にうれしそうなんだもん。
そして同好会の設立が認められたのと同時に、晴れて部室という名の教室を一室、練習用に使えることになったんだ。
でも、あたしたちが同好会を立ち上げたってことは絶対にバレないようにしなくちゃいけない。
じゃなきゃ、コスプレで正体を隠してステージに上がる意味がなくなっちゃうでしょ?
だから、誰も来ない最上階の一番端っこの空き教室で、窓に黒い紙を貼って、コッソリ練習をすることになったんだ。
柊先輩のギターも、早朝、まだ誰も学校に来ないうちにこっそり運び込んで、準備万端。
柊先輩の家には、こんな埃っぽい空き教室なんかよりずっと立派な防音室があるけど、学校なら家族の目を気にしなくていいから、すごく気が楽だって言ってる。
実際、ギターを弾く柊先輩はいつ見てもすっごく楽しそうで、できるだけ見ないようにしようって思っているのに、どうしても目が吸い寄せられるみたいに、柊先輩の姿を見つめてしまう。