「こういうときに、頼りになるやつが友だちで本当によかったって思うよ」

「俺の仕事を気軽に増やすな。昨日も急に連絡してきたかと思ったら、『部活を作りたいんだけど』なんて超面倒臭そうなこと言いだしやがって。ただでさえ貴重なデート時間を減らさないでくれ。まったく」

 若干の不機嫌さが声に混じっている。

「マジで悪かったって。この埋め合わせはいつかするからさ」

 そう言って、柊先輩が小杉先輩のことを拝む。


 小杉先輩、彼女さんがいるんだ。

 へぇ~、どんな人なんだろう。


「そうだ。今度四人でダブルでー……」

「しないから。そんなに捕まえておきたいなら、自分の力でなんとかしなよ」

 柊先輩の言葉を途中で遮ると、小杉先輩が小さくため息を吐く。

「冷たいこと言わないでよ。僕、デートなんかしたことないんだからさ」


 え……?

 お姉ちゃんとしょっちゅうデートしてるよね?


「……じゃなくてっ! 柊先輩、あたしまだ同好会をやるなんて、ひと言も言ってませんからね」


 危ない、危ない。

 本来の目的を忘れるところだったよ。


「だって、茜ちゃんが一緒にコスプレしようって誘ってくれたんじゃない」

「一緒に、とは言ってませんってば」