とにかく書類を出される前に止めなくちゃ。

 翌日の放課後、柊先輩のところを尋ねると、一人の男子生徒としゃべりながら机に向かう柊先輩を発見。

 幸い、教室内に残っているのはその二人だけみたい。


「柊先輩っ!」

 教室の外から思いきって声をかけると、二人同時に顔を上げてあたしの方を見た。

「茜ちゃん」

 柊先輩に小さく手招きされ、ゆっくりと教室の中へと足を踏み入れる。

「倉沢の妹だよ」

「ああ、君が。はじめまして。お姉さんにはいつもお世話になってます」

 柊先輩があたしのことを紹介すると、もう一人の先輩があたしに向かって小さく頭を下げた。

「は、はじめまして。倉沢茜です。よろしくおねがいします」

「で、こっちが生徒会長の小杉淳弥」

「せ!?」

 あたしが大きく目を見開くと、

「影が薄くてごめん」

 淡々とした口調で小杉先輩が言う。

「いえ、そういうわけじゃ……すみません」


 そういえば、こんな顔の人だったような気がしないでもないような……?

 つい二週間くらい前の生徒会選挙のときに、ステージ上でしゃべっていた姿を必死に思い出そうとしてみたけど、顔までどうしても思い出せない。

 さらりとした黒髪に、よく見ると端正な顔立ちをしている。

 でも、なんていうか柊先輩の華やかなオーラが強すぎて、どうしてもかすんじゃうっていうか。

 ひと言で言うと、とても真面目そうな人。