アンバランスなあたしたち

「ご、ごめんなさい……」

 反射的に、謝罪の言葉が口を突いて出る。

「別に、なにもやましいことはしてないよ。ただ二人で歌を歌ってただけ」

「またそんなくだらないものを弾いて」

 柊先輩のお母さんが、先輩の持つギターをチラッと見て、吐き捨てるように言う。


 くだらない……?

 どうしてそんな言い方をするの?

 柊先輩、こんなに楽しそうに弾いてるのに。


「……くだらなくなんかないです。柊先輩、とってもお上手です。きっと、すごくたくさん練習したんだと思います」


 どうしても黙っていられなかった。

 柊先輩のお母さんなのに、なんでそんな言い方をするの?

 なんで『上手ね』って言わないの?


「そのくらい一生懸命ピアノも練習していたら、あのときだって——」

「母さん。それはもう僕と父さんでちゃんと話し合って決めたことだから」


 柊先輩のものとは思えないような冷たい声。

 まるで『これ以上入ってこないで』と拒絶しているみたい。


「ごめんね。家まで送るよ」

 一転して柔らかい声であたしに向かってそう言うと、持っていたギターを手早くケースにしまい、お母さんの横をすり抜けるようにして部屋を出た。

「お、おじゃましましたっ」

 柊先輩のお母さんにぺこりと頭を下げると、あたしは柊先輩の背中を慌てて追った。