仕事も中断させられて藤乃屋へ連れて来られ徐ろにヒールを脱がされる。

「ストップ!!」

ストッキングに手を掛けようとする彼の手を静止して更衣室に逃げ込んで前回と同じ患者さん用のガウンに腕を通した。




「円生は隙が多いんだよ」

ブツブツと言いながらフットマッサージと言う名の消毒をされて押し倒されるようにベッドに転がされる。

「円生、話を」
「パパさん」
「茶化すな」


ーーガチャ


「今日はお前が?」

「俺がする!」

「いえいえ大先生宜しくお願いします」

彼に背を向け大先生に笑顔を向けた。

子供が居た事実は問題ではない。
ただホントの話をして欲しかったし濁すような事もして欲しくなかった。

(まあ…ショックだったけど子供には罪はない)

「分かった。お前は出ていけ」

「ちょっ、じいさん!」

パタンと診療室のドアを閉めた。

「さて円生ちゃん久しぶりだね」

診療ベッドにうつ伏せの私は「お久しぶりです」と言って目を閉じる。

大先生の施術は優しい。
私を寝かせるかのように触れる優しいタッチは心地よく大半は大先生に骨抜きにされてしまう。

「悪い事をしたね…翔(しょう)いや子供の話」

(あの子、翔くんと言うのか…)

大先生はその後もゆっくり動かす手と同じ様にゆっくり口を開く。

「健太(けんた)との約束を守ったばかりに」

半分意識が飛びそうになってた私は新しく出て来た名前に目が覚めた。

「え?あの健太さんて誰ですか?」

ゆっくり動いてた大先生の手が止め少し驚いた声で「健太は陸の兄でワシの孫」とハハッと笑い声を上げた。