人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

(子どもがいなければ、イヴァン様が傷付いてしまう。だから私はーーー)

ヴァイオレットが顔を上げると、イヴァンは何かを考え込んでいるようだった。何を考えているのかは、非魔法家系のヴァイオレットにはわからない。だが、言葉で思いを伝えることはどんな立場であってもできる。

「イヴァン様、これは私の義務です。この義務を果たさない限り、イヴァン様がさらに親戚の方から煙たがられることになってしまいます。私は、それが嫌なのです」

何故そう思ってしまうのか、ヴァイオレットには自分の気持ちが理解できない。今のこの気持ちは、本で目にしたことのない感情である。

「ヴァイオレット、本当にいいんだね?」

イヴァンが訊ねる。その青い目は鋭く、まるで獲物を狩る前の猛獣のようで、ヴァイオレットの体にゾクリと寒気が走る。

「はい。覚悟は、とうにできております」

震えを必死に隠しながらヴァイオレットが言うと、向かい合うようにして座っていたイヴァンの姿が一瞬にして消えてしまう。ヴァイオレットが突然イヴァンが消えたことに驚いていると、肩に腕が回される。

「イヴァン様!」