ヴァイオレットが聞き返した刹那、視界がグニャリと歪む。否、視界だけではない。ヴァイオレットは自分の全身が歪んでいるかのような感覚を覚えた。

(えっ?何?何が起きているの?私、どうして捻れているの?瞬間移動の魔法をイヴァン様は使っていないのに!)

無理やり捻られていくような痛みがヴァイオレットの体に走る。骨が砕け、内臓が潰れてしまいそうな程の痛みに、ヴァイオレットは口を開ける。しかし、その口から悲鳴は発することができない。

やがて、ヴァイオレットの意識は遠のいた。



「ヴァイオレット!!」

イヴァンは一秒前までヴァイオレットがいた場所へと駆け寄る。ヴァイオレットは小石を手にした瞬間、消えてしまった。

石にかけられていた魔法は、禁忌とされている相手に拷問をかける魔法と遠くにいる人を自分の元へ呼び寄せる魔法だ。魔力の気配で一瞬にしてわかったものの、止めることが間に合わなかった。

「クソッ!!」

イヴァンは拳を握り締め、自身の足を殴り付ける。守るためにヴァイオレットのそばにいたというのに、守ることができなかった。自身に対し苛立ちが募っていく。

「君、この石を誰から預かったんだ!?」

イヴァンは怒鳴り付けるような声で言い、男の子の肩を強く掴んだ。