「見苦しいものを見せてしまってごめんなさい。気が付かなかったわ。それよりあなたのドレス、カトレア・パルヴィンの新作じゃない!私もほしかったのに買えなかったのよ……。あなた、どこの家の方なの?」

イザベルはヴァイオレットに気付いていない。当然だろう。メイドとして働いていた頃と違い、今のヴァイオレットは顔にメイクをし、着飾っている。

「イザベル・ランカスター様、私はヴァイオレットと申します。イザベル様とチャールズ様の命でイヴァン・ブルースター様の元へ嫁ぎました。覚えていませんか?」

ヴァイオレットがそう話すと、目の前にいるイザベルは「は?」と呟く。その顔は徐々に「信じられない」と言いたげなものに変わっていく。

「何であんたがここにいるのよ?あんたは何もない田舎に引きこもっているはずじゃ……」

「イヴァン様はフェリシアーノ・アルストロメリア様,そして彼の側近であるサクラ・スエミヤ様とオリバー・グリーン様と親しい仲にあります。フェリシアーノ様が「ぜひ来てほしい」と招待状を送ってくださったのです」

「そのドレス、あんたに渡してた給料だけじゃ買えるわけないわよね?まさか盗んだの?この恥さらしが!」

「私は盗んでなどいません。このドレスは、イヴァン様が贈ってくださったものです。ご自身の燕尾服は新調なさらず、「お金は余っているから」と私に使ってくださいました」