「持田さんってサバサバしてて話しかけやすいよね」
なかなか前を向こうとしない丹田くんが言った。
それってマナに思ってほしいこと第一位ではないか。ぜひもっと言って欲しい。
「そうかな? 私兄とその友達の中で育ってきたからかな。髪もこんなんだからかね」
私がケラっと笑って言うと、マナが突然口を挟んだ。
「髪こんなんって? どんなん?」
ちょっとニタニタと。私をからかう時のマナの表情。
私はマナが会話に加わってきただけで嬉しくなってしまった。
「え、もしかして私自身に言わせようとしてる? 自分から髪型子ザルだって言わせようとしてる?」
私は心のウキウキを力一杯押さえ込んで言った。
「言っちゃってんじゃん。自ら」
マナがこちらをチラッと見て、一瞬だけ笑った。気がした。
勝ち誇ったような顔で。偉そうに。でも唇がキュッてなって。
私はブワッと赤面した。自分でも頬から上が熱くなったのがわかった。
まずいまずい。と私は手で顔を抑える。
その時、丹田くんと目が合った。私の顔をまじまじと眺める丹田くん。
マナの笑顔(らしきもの)に赤面してるのバレちゃったかな?
「持田さんの髪型いいじゃん。小顔だからめっちゃ似合う。俺ショート好きなんだよね」
え、丹田氏なにを言い出すか。そして意外と鈍いのか?
そんなのマナに馬鹿にされて終わるだけなのでやめていただきたい。
「丹田、キモいよ」
マナが言い捨てた。男友達にも相変わらずの塩対応。
「キモいとか言うなし。じゃあマナはどんな髪型が好きなわけ」
丹田さん、なんていい質問。
マナの好み。これ重要ポイントなのに、甲斐はそういうことは教えてくれない。
なんのために誓約書まで書いたんだか。
……あれ、でもロングヘアが好きとか言われたら、私立ち直れない。
ロングになる頃にはもう卒業してるって話じゃないか。
「うーん。ちょーロングかな」
マナはまた勝ち誇った顔をして、私をチラリと見て言った。
え、なにそれ。見透かしてますか? 私の心。
目が合ってちょっとキュンとしてしまったけれど、見透かされてるんだとしたらめちゃくちゃまずい。
「え、ちょーロングっつったら四組の町山さんとか?美人だしな。あーマナとお似合いだな」
と丹田氏。
誰よ、町山さん。
「誰だよ、町山」
私の心の声が漏れたのかと思ったら、マナとリンクしてしまったみたい。
「え、誰だよって。同じ中学じゃん」
丹田くんは信じられないという顔でマナを見た。
マナは「知らん」と言ってページをめくった。
「持田さん。マナってなんかこうドライですよね」
そうですね。と私は頷いた。
「ボクともさ、なかなか遊んでくれないんだよね。せっかく高校でも同じクラスになれたのにさ」
丹田くんはトホホと私の机に頬杖をついた。
丹田くんがマナをすごく好きなのはよくわかった。
「そうなのね。風間くん冷たいわね。漫画ばっかり読んでね。漫画とサッカーしか興味ないのかしらね」
と私も自分の机に頬杖をついて呆れたようにい言ってやった。
「ほんとだよね。漫画とサッカー馬鹿なんだよ。でもさ、僕そんなマナも好き」
丹田くんのマナ愛に若干引いてはいますが、思いがけず仲間ができて嬉しい。便乗しよう。
「分かる分かる。いつもうるせーって感じで冷たいのにさ、漫画語る時は少年よね。可愛い可愛くないで言ったらめちゃくちゃかわいいよね!!」
「わーかーるー!」と丹田くんが大声を出したところで、マナがヤンガーで丹田くんの頭をどついた。
「うるせーよ。盛り上がるな」
ドS爆発。丹田くん本気で首グキってなったけど大丈夫か。
そしてそのままマナは丹田くんにヤンガーを放った。
「え、貸してくれんの? でも次持田さんでしょ?」
丹田くんが頭と首筋をさすりながら言うと、マナは五限の現国の教科書を出しはじめた。
「やっぱり持田さんには貸さない」
え、なぜ。
「えーマナひどい。そうゆう意味わかんない意地悪するのやめなよ」
「そーよそーよ」と私も口を出す。
マナはすでにフルシカトモードに突入していた。流石にうざかったかもしれない。やりすぎた。反省。
「もうほっとこう持田さん。はい。ヤンガー先どうぞ」
「いいよいいよ。丹田くんゆっくり読んで」
「え! そんな! ダメだよ、約束だったじゃん」
丹田くんは私の両手を取って、なぜか愛を語らう恋人同士のようなポーズに。
「雷鳴読みたいでしょ? ほんと僕は次でいいから! ね! マナの意地悪なんて気にしな……」
「だからうざいっつーの。仲良くなってんじゃねーよ」
また丹田くんに被せるようにマナが吠えた。
「マナが意地悪するからだよー」
と丹田くんが口を尖らせると、マナはするどく睨みつける。
「うるせーよ。もう前向け。それ以上騒ぐと今日一緒に帰んねーぞ。大人しく漫画読んでろ」
マナが! たくさん喋ってる! と私は思わず感動。
いつも口を動かすのも面倒だと言わんばかりのマナが。
あんな長い言葉で丹田くんを罵倒するなんて。私もしてもらいたい!
丹田くんも怒られたはずなのに、なんか嬉しそうに素直に前を向いた。
「丹田くんって風間くんのこと大好きなんだね」
と私がマナにコソっと言うと、マナはありありと嫌そうな顔をしてこちらを見た。
「まったく嬉しくねー」
「ひどい。あんなに丹田くんは風間くんを想ってるのに!」
「もうやめろその話題。……そういやさ、お前甲斐と同中なの」
突然甲斐の名前が出てきて私は飛び上がりそうになった。何かバレた? いや、飛躍しすぎか。
「同中で同小。ついでに幼稚園も一緒」
と、ドギマギ答えると、マナは「ふーん」と素っ気なく前を向いてしまった。
「なんで?」と聞くと、「お前と甲斐が話してるところ見かけたから」とマナは言った。
「風間くん、甲斐と仲良いの? 甲斐もサッカー部だよね」
「まあまあ」
マナはもう話す気がなさそうだなと悟って、私はそれ以上話しかけるのはやめた。
しつこくなりすぎず、それでいて積極的に……。
それにしてもマナの口から甲斐の名前が出てびっくりした。これは今日甲斐に報告しなくては。
なかなか前を向こうとしない丹田くんが言った。
それってマナに思ってほしいこと第一位ではないか。ぜひもっと言って欲しい。
「そうかな? 私兄とその友達の中で育ってきたからかな。髪もこんなんだからかね」
私がケラっと笑って言うと、マナが突然口を挟んだ。
「髪こんなんって? どんなん?」
ちょっとニタニタと。私をからかう時のマナの表情。
私はマナが会話に加わってきただけで嬉しくなってしまった。
「え、もしかして私自身に言わせようとしてる? 自分から髪型子ザルだって言わせようとしてる?」
私は心のウキウキを力一杯押さえ込んで言った。
「言っちゃってんじゃん。自ら」
マナがこちらをチラッと見て、一瞬だけ笑った。気がした。
勝ち誇ったような顔で。偉そうに。でも唇がキュッてなって。
私はブワッと赤面した。自分でも頬から上が熱くなったのがわかった。
まずいまずい。と私は手で顔を抑える。
その時、丹田くんと目が合った。私の顔をまじまじと眺める丹田くん。
マナの笑顔(らしきもの)に赤面してるのバレちゃったかな?
「持田さんの髪型いいじゃん。小顔だからめっちゃ似合う。俺ショート好きなんだよね」
え、丹田氏なにを言い出すか。そして意外と鈍いのか?
そんなのマナに馬鹿にされて終わるだけなのでやめていただきたい。
「丹田、キモいよ」
マナが言い捨てた。男友達にも相変わらずの塩対応。
「キモいとか言うなし。じゃあマナはどんな髪型が好きなわけ」
丹田さん、なんていい質問。
マナの好み。これ重要ポイントなのに、甲斐はそういうことは教えてくれない。
なんのために誓約書まで書いたんだか。
……あれ、でもロングヘアが好きとか言われたら、私立ち直れない。
ロングになる頃にはもう卒業してるって話じゃないか。
「うーん。ちょーロングかな」
マナはまた勝ち誇った顔をして、私をチラリと見て言った。
え、なにそれ。見透かしてますか? 私の心。
目が合ってちょっとキュンとしてしまったけれど、見透かされてるんだとしたらめちゃくちゃまずい。
「え、ちょーロングっつったら四組の町山さんとか?美人だしな。あーマナとお似合いだな」
と丹田氏。
誰よ、町山さん。
「誰だよ、町山」
私の心の声が漏れたのかと思ったら、マナとリンクしてしまったみたい。
「え、誰だよって。同じ中学じゃん」
丹田くんは信じられないという顔でマナを見た。
マナは「知らん」と言ってページをめくった。
「持田さん。マナってなんかこうドライですよね」
そうですね。と私は頷いた。
「ボクともさ、なかなか遊んでくれないんだよね。せっかく高校でも同じクラスになれたのにさ」
丹田くんはトホホと私の机に頬杖をついた。
丹田くんがマナをすごく好きなのはよくわかった。
「そうなのね。風間くん冷たいわね。漫画ばっかり読んでね。漫画とサッカーしか興味ないのかしらね」
と私も自分の机に頬杖をついて呆れたようにい言ってやった。
「ほんとだよね。漫画とサッカー馬鹿なんだよ。でもさ、僕そんなマナも好き」
丹田くんのマナ愛に若干引いてはいますが、思いがけず仲間ができて嬉しい。便乗しよう。
「分かる分かる。いつもうるせーって感じで冷たいのにさ、漫画語る時は少年よね。可愛い可愛くないで言ったらめちゃくちゃかわいいよね!!」
「わーかーるー!」と丹田くんが大声を出したところで、マナがヤンガーで丹田くんの頭をどついた。
「うるせーよ。盛り上がるな」
ドS爆発。丹田くん本気で首グキってなったけど大丈夫か。
そしてそのままマナは丹田くんにヤンガーを放った。
「え、貸してくれんの? でも次持田さんでしょ?」
丹田くんが頭と首筋をさすりながら言うと、マナは五限の現国の教科書を出しはじめた。
「やっぱり持田さんには貸さない」
え、なぜ。
「えーマナひどい。そうゆう意味わかんない意地悪するのやめなよ」
「そーよそーよ」と私も口を出す。
マナはすでにフルシカトモードに突入していた。流石にうざかったかもしれない。やりすぎた。反省。
「もうほっとこう持田さん。はい。ヤンガー先どうぞ」
「いいよいいよ。丹田くんゆっくり読んで」
「え! そんな! ダメだよ、約束だったじゃん」
丹田くんは私の両手を取って、なぜか愛を語らう恋人同士のようなポーズに。
「雷鳴読みたいでしょ? ほんと僕は次でいいから! ね! マナの意地悪なんて気にしな……」
「だからうざいっつーの。仲良くなってんじゃねーよ」
また丹田くんに被せるようにマナが吠えた。
「マナが意地悪するからだよー」
と丹田くんが口を尖らせると、マナはするどく睨みつける。
「うるせーよ。もう前向け。それ以上騒ぐと今日一緒に帰んねーぞ。大人しく漫画読んでろ」
マナが! たくさん喋ってる! と私は思わず感動。
いつも口を動かすのも面倒だと言わんばかりのマナが。
あんな長い言葉で丹田くんを罵倒するなんて。私もしてもらいたい!
丹田くんも怒られたはずなのに、なんか嬉しそうに素直に前を向いた。
「丹田くんって風間くんのこと大好きなんだね」
と私がマナにコソっと言うと、マナはありありと嫌そうな顔をしてこちらを見た。
「まったく嬉しくねー」
「ひどい。あんなに丹田くんは風間くんを想ってるのに!」
「もうやめろその話題。……そういやさ、お前甲斐と同中なの」
突然甲斐の名前が出てきて私は飛び上がりそうになった。何かバレた? いや、飛躍しすぎか。
「同中で同小。ついでに幼稚園も一緒」
と、ドギマギ答えると、マナは「ふーん」と素っ気なく前を向いてしまった。
「なんで?」と聞くと、「お前と甲斐が話してるところ見かけたから」とマナは言った。
「風間くん、甲斐と仲良いの? 甲斐もサッカー部だよね」
「まあまあ」
マナはもう話す気がなさそうだなと悟って、私はそれ以上話しかけるのはやめた。
しつこくなりすぎず、それでいて積極的に……。
それにしてもマナの口から甲斐の名前が出てびっくりした。これは今日甲斐に報告しなくては。