なにこのクズたち……と血の気が引いて半泣きになっていると、私の肩を掴むピアスの手が急に離れた。


「おい」


マナの声だ、と思って顔を上げると、ピアス野郎の腕をマナがねじり上げていた。


あーまただ。


またマナが。


もっともっと好きになる。


「痛いってマナ。いや、冗談じゃん。甲斐がなかなか来ねーからさ、菜月ちゃんに絡んでたら走って追っかけてくるかなとか思って……ごにょごにょ」


集団全体が足を止めて、ピアス野郎とマナに注目する。

「大丈夫?」と丹田くんと松本さんが私を気遣う。


えーっと。マナが助けてくれて感動なのはちょっと置いておいて……。この状況まずいよね。


「もー! ほんと、甲斐と私はそういうのじゃないしね! からかうの、もう禁止! ね! はい、じゃ、この話おしまい!」


私は出来る限り明るく言って、まだピアス野郎の手を掴んでいたマナの手にそっと触れ、マナの怒ってる顔を見た。


するとマナはピアス野郎から手を放す。


バツが悪そうに、ピアスたちは私に「ごめんね、調子乗った」と言うとさっさと歩いて行ってしまった。

その流れでみんなまた進み始める。


トミーが苛立っているのが遠目にも分かり、私はまた手でゴメンのポーズをして見せた。


「風間くん、ありがとう」


立ち止まっていたマナは、私が言うとそっとこっちを見た。


「……嫌がれよ」


「うん」


「……怖かったんだろ」


「うん」


「……肩、痛くねーの」


「うん」


私はマナの腕に触れた手をなかなか離せないまま、また泣きそうになっていた。


「げ。甲斐がくる。行くぞ」


と言って、マナは私の腕を引いて歩き出した。


マナに触れているところが溶けてしまいそうだった。


歩き出すとマナはすぐ私の手を離したけど、マナに触れた右手はずっと痛いくらいジンジンしていた。