林間学校が明後日に迫っていた。
だけど私たちの班はハイキングのスケジュール組みとしおりの作成が進まず、今日は居残りです。
マナと丹田くんはサッカー部のレギュラー選抜? か何かがあるそうで、残りの四人で作成中。
クルミちゃんはマナがいないからか明らかにやる気がなく、ずっとスマホをいじっている。
トミーはタイムテーブルをずっと考えてくれてて、私と松本さんとで班のしおりを作っていた。
「くっ……、できた」
と、一時間くらいでトミーが痩せこけながらタイムテーブルを終わらせると、予備校があるので……と帰っていった。
それに便乗するように、クルミちゃんも帰宅。(おいおい)
トミーが書いてくれたタイムテーブルを元に、私と松本さんでしおりにハイキングコースとスケジュールを書き込んでいく。
これ結構面倒な作業。コピー機使わず六冊作成。
「ねーねー、菜月ちゃんてさ」
「うん」と、私は必死に数字を書き込みながら、松本さんに応える。
「もしかして、風間くんのこと好き?」
ぶー。と、私は吹き出しそうになるのをギリギ
リ堪えて、松本さんを見た。
「え!」
そして教室内をぐるぐると見渡した。流石にこんな時間じゃもう誰もいない。セーフ。 いやアウト?
「すすすす好きじゃないよ。全然。全くもって」
「そんなに否定しなくてもいいのに。私お似合いだなと思ってて」
「お似合い?」
なんて嬉しいこと言ってくれる子だろうか。
「いや、でもほんとに全くそんなんじゃないよ」
手をバタバタさせて否定する私に、松本さんはクスクス笑った。
「じゃあ、そういうことにしとくね」
あ、助かった。いや、ダメか?
というか、私態度に出てるんだろうな……。困った。
甲斐にバレたら……。うん? バレたらどうなるんだっけ?
もしも誓約を守れなかった場合、どうなるんだっけ。
確か第三条とかに書いてあった気がする。
でもそれよりも、約束しないなら中学生時代の私の気持ち悪い行動の数々をマナにバラすぞと脅され、今後一切協力してやらないと言われて、ついサインしたんだけど。
でも、あの誓約書の第三条には別のことが書いてあった気がする。
なんだっけな。
私はしおりのことはすっかり頭から飛んで、口元に手を当てて考え込んだ。
すると、教室のドアがガラガラとスライドする音がした。
「あれ? 風間くん? 部活は?」
と、松本さんが言った。
振り向くと、サッカーの練習着姿のマナがドアのところに立っていた。
私は不意を突かれて、お決まりの赤面。
さっきまで手に付かなくなっていたしおりに慌てて向かうフリをした。
「二年の試合始まったから抜けてきた。三十分くらい居られる」
マナはタラタラ歩きながら私たちの席の方までやってきて「他の奴らは」ときいた。
「トミーくんはタイムテーブルやってくれて、予備校だからって帰ったよ。クルミちゃんはちょっとわかんないけど帰ったよ」
と、松本さんがテキパキと説明。
「終わりそう?」
マナが私の机を後ろから覗き込む。
……ダメダメ待って、まだ赤いから。と思いつつ、私はマナを無視してタイムテーブルを写す作業を続ける。
「あー、風間くんちょうど良かった。私も用事があって。先に帰っても平気かな? 私の書いてるしおり、あと少しで終わるから。お願いしてもいい?」
松本さんが言った。
え、と斜め前に座る松本さんを見ると、朗らかな笑顔を私に向けている。
まさかの二人きりにしてくれる算段?!
そしてマナは「あーいいけど」と言って自分の席に座った。
それから松本さんは、マナに進捗状況をさっさと伝えると、しおりをマナの机に託した。
そして、六つくっつけていた席を、私とマナの机だけ残して元に戻し、そそくさと帰っていった。
松本さん、そんなに早く動けるんだね。と感心してしまうくらいスマートな去り際だった。
私はおそらくまだ赤面中の顔を隠しつつ、「丹田くんは?」ときいて正面のマナを見た。
「あいつはボール係やらされてると思う」
丹田くんが先輩に捕まる中、マナが飄々と部を抜け出す様を想像して、私はぷっ。と笑った。
「丹田くんと風間くんは仲良いんだね」
「同中だから」
「一番仲良い?」
「どうだろな。場面」
場面か。マナの交友関係がいまいち掴めないのは、その「場面」のせいなのかもなーと思った。
ということは、私も場面によっては一番仲のいい女友達になれるのかな? と思った。
だけど私たちの班はハイキングのスケジュール組みとしおりの作成が進まず、今日は居残りです。
マナと丹田くんはサッカー部のレギュラー選抜? か何かがあるそうで、残りの四人で作成中。
クルミちゃんはマナがいないからか明らかにやる気がなく、ずっとスマホをいじっている。
トミーはタイムテーブルをずっと考えてくれてて、私と松本さんとで班のしおりを作っていた。
「くっ……、できた」
と、一時間くらいでトミーが痩せこけながらタイムテーブルを終わらせると、予備校があるので……と帰っていった。
それに便乗するように、クルミちゃんも帰宅。(おいおい)
トミーが書いてくれたタイムテーブルを元に、私と松本さんでしおりにハイキングコースとスケジュールを書き込んでいく。
これ結構面倒な作業。コピー機使わず六冊作成。
「ねーねー、菜月ちゃんてさ」
「うん」と、私は必死に数字を書き込みながら、松本さんに応える。
「もしかして、風間くんのこと好き?」
ぶー。と、私は吹き出しそうになるのをギリギ
リ堪えて、松本さんを見た。
「え!」
そして教室内をぐるぐると見渡した。流石にこんな時間じゃもう誰もいない。セーフ。 いやアウト?
「すすすす好きじゃないよ。全然。全くもって」
「そんなに否定しなくてもいいのに。私お似合いだなと思ってて」
「お似合い?」
なんて嬉しいこと言ってくれる子だろうか。
「いや、でもほんとに全くそんなんじゃないよ」
手をバタバタさせて否定する私に、松本さんはクスクス笑った。
「じゃあ、そういうことにしとくね」
あ、助かった。いや、ダメか?
というか、私態度に出てるんだろうな……。困った。
甲斐にバレたら……。うん? バレたらどうなるんだっけ?
もしも誓約を守れなかった場合、どうなるんだっけ。
確か第三条とかに書いてあった気がする。
でもそれよりも、約束しないなら中学生時代の私の気持ち悪い行動の数々をマナにバラすぞと脅され、今後一切協力してやらないと言われて、ついサインしたんだけど。
でも、あの誓約書の第三条には別のことが書いてあった気がする。
なんだっけな。
私はしおりのことはすっかり頭から飛んで、口元に手を当てて考え込んだ。
すると、教室のドアがガラガラとスライドする音がした。
「あれ? 風間くん? 部活は?」
と、松本さんが言った。
振り向くと、サッカーの練習着姿のマナがドアのところに立っていた。
私は不意を突かれて、お決まりの赤面。
さっきまで手に付かなくなっていたしおりに慌てて向かうフリをした。
「二年の試合始まったから抜けてきた。三十分くらい居られる」
マナはタラタラ歩きながら私たちの席の方までやってきて「他の奴らは」ときいた。
「トミーくんはタイムテーブルやってくれて、予備校だからって帰ったよ。クルミちゃんはちょっとわかんないけど帰ったよ」
と、松本さんがテキパキと説明。
「終わりそう?」
マナが私の机を後ろから覗き込む。
……ダメダメ待って、まだ赤いから。と思いつつ、私はマナを無視してタイムテーブルを写す作業を続ける。
「あー、風間くんちょうど良かった。私も用事があって。先に帰っても平気かな? 私の書いてるしおり、あと少しで終わるから。お願いしてもいい?」
松本さんが言った。
え、と斜め前に座る松本さんを見ると、朗らかな笑顔を私に向けている。
まさかの二人きりにしてくれる算段?!
そしてマナは「あーいいけど」と言って自分の席に座った。
それから松本さんは、マナに進捗状況をさっさと伝えると、しおりをマナの机に託した。
そして、六つくっつけていた席を、私とマナの机だけ残して元に戻し、そそくさと帰っていった。
松本さん、そんなに早く動けるんだね。と感心してしまうくらいスマートな去り際だった。
私はおそらくまだ赤面中の顔を隠しつつ、「丹田くんは?」ときいて正面のマナを見た。
「あいつはボール係やらされてると思う」
丹田くんが先輩に捕まる中、マナが飄々と部を抜け出す様を想像して、私はぷっ。と笑った。
「丹田くんと風間くんは仲良いんだね」
「同中だから」
「一番仲良い?」
「どうだろな。場面」
場面か。マナの交友関係がいまいち掴めないのは、その「場面」のせいなのかもなーと思った。
ということは、私も場面によっては一番仲のいい女友達になれるのかな? と思った。