「とりあえずクルミちゃんのことは様子見ます。人が誰を好きだとか、告白したいとかって気持ちは周りがどうこう言うもんじゃないしね」
「そうだなー」と、甲斐はあっけらかんと言った。
あんたは私の告白に口出し過ぎだけどな! と思ったけど、グッと堪えた。
「そんで、マナのタイプの話なんだけど」
と、私はベッドから身を乗り出して、床に座ってる甲斐の顔を覗き込んだ。
「もういい加減教えてください」
私は目をらんらんとさせて甲斐の顔を見た。
「菜月」と、甲斐は真剣な表情。
「はい」
「胸、見えてるけど」
え? と思って私は自分の胸元を見る。
部屋着のパーカーの下に着たキャミソールが前のめりになるとパカっと。ブラのフロントのリボンまで丸見え。
「ぎゃーーーー」と、私はベッドに逃げ込みタオルケットにくるまった。
「そんな騒がんでも。騒ぐほどねーだろ」
意図せず見せてしまった恥ずかしさに追い打ちをかけるその仕打ち。
「うー。ひどい。私を子ザル扱いするマナですらもっと優しかったよ」
「なにその話」
「昨日話さなかったっけ? 甲斐の体育着大きすぎた時に『ブラ見えちゃうよね』って私が言ったら、マナなにも言わずにいてくれたんだよ。顔真っ赤だったけど」
……甲斐の反応なし。
あれ? と思ってタオルケットから顔を出すと、甲斐はなんか怪訝そうな顔をしている。
「いや、あれだよ? 私はマナのこと好きそうな態度とかとってないからね?」
……この謎のフォローもなんか板についてきたな。
なんの効力もないだろうなーと分かってるのに。
なんでか私はあの誓約にいつもしっかり縛られていた。(たまに興奮しすぎると忘れるけど)
「ふーん。マナがねー」と、甲斐は私のことはそっちのけで、口元に手を当ててなにやらブツブツ言っている。
私はプッと笑った。
「やだー。考え事しながらブツブツ言う時、甲斐と私同じポーズしてる。私たちほんと姉弟みたいだね」
ふふふ、『姉弟』と書いてきょうだいだぞ! と私は心の中でまた笑った。
すると甲斐の目つきが急に変わったのが分かった。
「へー。俺は汰月と同じ扱い?」
急に甲斐は低い声で言って、ベッドに転がる私の上にどさっと覆いかぶさった。
私は目が点になった。目の前に甲斐の顔。
「いや、お兄はお兄だけど、甲斐は弟って言いますか」
と、誤魔化そうと思って言うも、甲斐は全くどかないし、鋭い視線を私から離してくれない。
ちょっとこの体勢は。どうなんだ。
「菜月さ、」と、甲斐がまた低い声で何か言いかけた時、ガチャっと部屋のドアが開く音がした。
「うおーい、甲斐来てるんだって?」
……お兄、グッドなんだかバッドなんだか分からないけどすごいタイミング。そしていい加減ノックというものを覚えろ。
「っておい。なにしてんだよ」
お兄は顔を赤くして、ぎゃっと驚いたポーズをした。
甲斐は私に覆いかぶさったままフリーズ。なんとも言えない顔をしている。
私はなかなかどかない甲斐のみぞおちに膝を入れて、強制的にどいていただいた。
「お兄、お風呂入った? もうご飯だって?」
と、何事もなかったようにする私に、お兄はまだドギマギと驚いたポーズを続けている。
「ほら、甲斐も食べてくんでしょ? 下行くよ」
と言っても、甲斐はなんか気まずそうな顔をして目をそらす。
「ちょっと! そういう態度取ると本当に何かあったみたいだからやめてよね。お兄もいつまでも驚いてないでよ。なんもないから! たまたまふざけてただけだから」
力を込めて一息に言ったので、私はハーハーと肩で息をした。
まったく、この男どもは。
その晩、甲斐はいつも通りご飯を食べていったけど、お兄はなぜかずっと私に対していつも以上に突っかかってきていた。
そして甲斐が帰り、私がお風呂に入っていると、お兄が脱衣所からドア越しに声をかけて来た。
「お前さ、二人の時にほいほい甲斐を部屋に入れるなっつーの」
「は? なに、さっきのことまだ気にしてんの? 何もないって言ってんじゃん」
しつこいな、と私は湯船に口まで浸かってブクブクした。
「お前は良くてもなー甲斐は……ごにょごにょ」
「え? なに? てゆーか、お兄だって彼女部屋に連れ込んでるくせに。なによ私ばっかり」
「俺は彼女だからいいに決まってんでしょ。お前と甲斐は付き合ってないんだから! 甲斐が可哀想なの!」
と言って、お兄は勢いよく風呂場のドアをバカンと開けた。
「あ、ごめ……」と、お兄は血の気が引いた顔をした。
私は湯船に深く浸かりながら、手元にあったアヒル隊長をお兄めがけて思いっきり投げつけた。
ぎゃーと大騒ぎして、お兄はママにしかられていた。
もーなにこの間抜けな兄。
それにしても、またまたマナの好みのタイプを聞きそびれてしまった。
まったく。甲斐は教える気あるのかないのか。
「そうだなー」と、甲斐はあっけらかんと言った。
あんたは私の告白に口出し過ぎだけどな! と思ったけど、グッと堪えた。
「そんで、マナのタイプの話なんだけど」
と、私はベッドから身を乗り出して、床に座ってる甲斐の顔を覗き込んだ。
「もういい加減教えてください」
私は目をらんらんとさせて甲斐の顔を見た。
「菜月」と、甲斐は真剣な表情。
「はい」
「胸、見えてるけど」
え? と思って私は自分の胸元を見る。
部屋着のパーカーの下に着たキャミソールが前のめりになるとパカっと。ブラのフロントのリボンまで丸見え。
「ぎゃーーーー」と、私はベッドに逃げ込みタオルケットにくるまった。
「そんな騒がんでも。騒ぐほどねーだろ」
意図せず見せてしまった恥ずかしさに追い打ちをかけるその仕打ち。
「うー。ひどい。私を子ザル扱いするマナですらもっと優しかったよ」
「なにその話」
「昨日話さなかったっけ? 甲斐の体育着大きすぎた時に『ブラ見えちゃうよね』って私が言ったら、マナなにも言わずにいてくれたんだよ。顔真っ赤だったけど」
……甲斐の反応なし。
あれ? と思ってタオルケットから顔を出すと、甲斐はなんか怪訝そうな顔をしている。
「いや、あれだよ? 私はマナのこと好きそうな態度とかとってないからね?」
……この謎のフォローもなんか板についてきたな。
なんの効力もないだろうなーと分かってるのに。
なんでか私はあの誓約にいつもしっかり縛られていた。(たまに興奮しすぎると忘れるけど)
「ふーん。マナがねー」と、甲斐は私のことはそっちのけで、口元に手を当ててなにやらブツブツ言っている。
私はプッと笑った。
「やだー。考え事しながらブツブツ言う時、甲斐と私同じポーズしてる。私たちほんと姉弟みたいだね」
ふふふ、『姉弟』と書いてきょうだいだぞ! と私は心の中でまた笑った。
すると甲斐の目つきが急に変わったのが分かった。
「へー。俺は汰月と同じ扱い?」
急に甲斐は低い声で言って、ベッドに転がる私の上にどさっと覆いかぶさった。
私は目が点になった。目の前に甲斐の顔。
「いや、お兄はお兄だけど、甲斐は弟って言いますか」
と、誤魔化そうと思って言うも、甲斐は全くどかないし、鋭い視線を私から離してくれない。
ちょっとこの体勢は。どうなんだ。
「菜月さ、」と、甲斐がまた低い声で何か言いかけた時、ガチャっと部屋のドアが開く音がした。
「うおーい、甲斐来てるんだって?」
……お兄、グッドなんだかバッドなんだか分からないけどすごいタイミング。そしていい加減ノックというものを覚えろ。
「っておい。なにしてんだよ」
お兄は顔を赤くして、ぎゃっと驚いたポーズをした。
甲斐は私に覆いかぶさったままフリーズ。なんとも言えない顔をしている。
私はなかなかどかない甲斐のみぞおちに膝を入れて、強制的にどいていただいた。
「お兄、お風呂入った? もうご飯だって?」
と、何事もなかったようにする私に、お兄はまだドギマギと驚いたポーズを続けている。
「ほら、甲斐も食べてくんでしょ? 下行くよ」
と言っても、甲斐はなんか気まずそうな顔をして目をそらす。
「ちょっと! そういう態度取ると本当に何かあったみたいだからやめてよね。お兄もいつまでも驚いてないでよ。なんもないから! たまたまふざけてただけだから」
力を込めて一息に言ったので、私はハーハーと肩で息をした。
まったく、この男どもは。
その晩、甲斐はいつも通りご飯を食べていったけど、お兄はなぜかずっと私に対していつも以上に突っかかってきていた。
そして甲斐が帰り、私がお風呂に入っていると、お兄が脱衣所からドア越しに声をかけて来た。
「お前さ、二人の時にほいほい甲斐を部屋に入れるなっつーの」
「は? なに、さっきのことまだ気にしてんの? 何もないって言ってんじゃん」
しつこいな、と私は湯船に口まで浸かってブクブクした。
「お前は良くてもなー甲斐は……ごにょごにょ」
「え? なに? てゆーか、お兄だって彼女部屋に連れ込んでるくせに。なによ私ばっかり」
「俺は彼女だからいいに決まってんでしょ。お前と甲斐は付き合ってないんだから! 甲斐が可哀想なの!」
と言って、お兄は勢いよく風呂場のドアをバカンと開けた。
「あ、ごめ……」と、お兄は血の気が引いた顔をした。
私は湯船に深く浸かりながら、手元にあったアヒル隊長をお兄めがけて思いっきり投げつけた。
ぎゃーと大騒ぎして、お兄はママにしかられていた。
もーなにこの間抜けな兄。
それにしても、またまたマナの好みのタイプを聞きそびれてしまった。
まったく。甲斐は教える気あるのかないのか。