そして出欠確認が済んで準備運動。
ストレッチが始まると、流石にまずいなと思って私は胸元を抑えながら、しゃがんだり伸ばしたりなんだりしていた。
さー! いざペアを決めたらトーナメント!
今日は男女混合ダブルス。
都合よくマナとペアにならないかなとキョロキョロ探していたら、体育の先生と話をしているマナを発見。
すると先生が私を手招きした。
「え、なになに?」と駆け寄る私。
「具合悪いんだって? 保健室行ってきな。風間、保健委員なの? 付き添ってやって」
は? と思ったけど、マナの目の訴えに圧倒され、私は「はあ」とだけ返事をしてそのまま二人で体育館を出た。
何この展開?! と頭の中卓球でいっぱいだった私は、思わぬマナとの二人っきりに膝がガクガク震えてきそうだった。
「お前さ。デカすぎたら休めつったろ」
「あ、うん。でも卓球だしいけるかなと」
私が慌てて答えると、マナは呆れた顔で私を一瞥する。
「バカだろ」
「すみません」
お目汚しだったなぁ、と恥ずかしくなって、私は襟ぐりを鎖骨のあたりでぎゅっと抑えた。
それはそうと、マナと並んで歩くなんて初めてでドキドキが止まらない。
いつも座ってるとあんまり分からないけど、マナはやっぱり背が大きくて、小さい私なんて見下ろすくらいだった。
(甲斐の方がでかいけど)
「風間くん、戻らないと卓球のペア組めなくなるんじゃない?」
「卓球嫌い」
「え! すごい楽しいのに! 私のスマッシュ見せたかったな。すごいんだよ。スコーンって。女子は誰も取れなかったよ」
と歩きながらスマッシュのフォームを見せるも、マナはこっちを見てくれない。
「その格好でそんなのやったら大変だろ」
この格好で本気のスマッシュ……。確かにおそらく胸が丸見えになるな。
私はカーッと熱くなって茹でタコになった。
「確かに。すごいお目汚しだね。もーなんでこんな日に限って。でもほらさ、私子ザルだしさ、子ザルのブラが見えたところでね? 野山へ帰れってくらいなもんで」
焦りすぎてそんなことを言った。口が滑ってブラとか言っちゃったよ。
無反応のマナを恐る恐る見上げると、マナも真っ赤になっていて驚いた。
あの、顔の筋肉死んでるの? ってくらい表情の乏しいマナが。
顔を!赤らめて!! 恥ずかしそうにしている!!!
私は思わず吹き出して笑った。
「風間くんまで真っ赤にさせちゃってごめんね、セクハラだったよね。あはは」
緊張からか私の笑いは収まらず。
マナは呆れた顔をしながらも、ちょっと表情が緩んでいるような。
なんとなくマナに少しだけ近づけたような。真っ赤になるマナなんて誰も観たことなさそうだな、なんて思った。
「ところで、風間くんって保健委員だっけ?」
私のマナ調査によると、マナは確かお花係だったはず。(似合わない)
「うるせーな」
マナはそのあとはちょっと私より前を歩いて、女子更衣室まで一緒に来てくれた。
そして着替えて廊下に出ると、マナは廊下の壁に寄りかかり、スマホをいじっていた。
「あれ? 体育戻らないの?」
「うちのクラス偶数だろ。お前いないと、今更戻っても俺余るんだよ」
ああ、そうかと思いつつ、マナが待っていてくれたことにもう心臓がドクンドクンうるさくてダメだ。
「教室戻る」
マナはさっさと行ってしまう。私は慌ててマナの背中を追いかけた。
教室に戻ると、マナは体育着の上から早業で制服を着て、すぐにまた漫画を読み始めた。
私も座って、甲斐の体育着をたたんだ。
そのあとはほとんど会話らしい会話はしなかったけど、マナの座る方の左半身が熱くて私は参っていた。
「さっき菜月とマナ、授業中二人で歩いてなかった?」
三限の終わりのチャイムが鳴ってすぐに体育着を返しに行くと、甲斐が言った。
ああ、そういえばさっき二人で甲斐の教室のあたり通ったな。
私は甲斐の体育着をめぐってのいきさつを説明した。
「ああ、俺のじゃ菜月にはデカすぎるよな。気がつかなかったわ」
私はマナと二人で過ごせた余韻で、まだ浮かれポンチだった。
「いやでもさ、甲斐に体育着借りたから二人で過ごせたんだよー。ありがと、ありがと」
私はヘラヘラしながら甲斐の腕をバンバン叩く。
甲斐は呆れたようにため息をついた。
「それはいいけど、バレるような態度とらなかっただろうな」
バレ……? ああ、いけない。あまりのことに、誓約書のこと忘れてた。
「たぶ……もちろん!」と、つっかえつつも自信満々に答えたけど、甲斐は疑惑の目で私をジトッと見やる。
「気持ちがバレてるようだったら、マナの好みマジで教えてやらないからな」
「あ! そうだそれ!」
今ききたい! と言いかけたところで、甲斐のクラスの女子と思われる二人が通りかかった。
「甲斐ー。もう体育だよー」
「この子、甲斐の友達? ちっちゃくてかわいいー」
……ちっちゃいは余計ではないかい。
そのままその女子たちが話に加わり、結局マナの好きなタイプは聞き出せなかった。
ストレッチが始まると、流石にまずいなと思って私は胸元を抑えながら、しゃがんだり伸ばしたりなんだりしていた。
さー! いざペアを決めたらトーナメント!
今日は男女混合ダブルス。
都合よくマナとペアにならないかなとキョロキョロ探していたら、体育の先生と話をしているマナを発見。
すると先生が私を手招きした。
「え、なになに?」と駆け寄る私。
「具合悪いんだって? 保健室行ってきな。風間、保健委員なの? 付き添ってやって」
は? と思ったけど、マナの目の訴えに圧倒され、私は「はあ」とだけ返事をしてそのまま二人で体育館を出た。
何この展開?! と頭の中卓球でいっぱいだった私は、思わぬマナとの二人っきりに膝がガクガク震えてきそうだった。
「お前さ。デカすぎたら休めつったろ」
「あ、うん。でも卓球だしいけるかなと」
私が慌てて答えると、マナは呆れた顔で私を一瞥する。
「バカだろ」
「すみません」
お目汚しだったなぁ、と恥ずかしくなって、私は襟ぐりを鎖骨のあたりでぎゅっと抑えた。
それはそうと、マナと並んで歩くなんて初めてでドキドキが止まらない。
いつも座ってるとあんまり分からないけど、マナはやっぱり背が大きくて、小さい私なんて見下ろすくらいだった。
(甲斐の方がでかいけど)
「風間くん、戻らないと卓球のペア組めなくなるんじゃない?」
「卓球嫌い」
「え! すごい楽しいのに! 私のスマッシュ見せたかったな。すごいんだよ。スコーンって。女子は誰も取れなかったよ」
と歩きながらスマッシュのフォームを見せるも、マナはこっちを見てくれない。
「その格好でそんなのやったら大変だろ」
この格好で本気のスマッシュ……。確かにおそらく胸が丸見えになるな。
私はカーッと熱くなって茹でタコになった。
「確かに。すごいお目汚しだね。もーなんでこんな日に限って。でもほらさ、私子ザルだしさ、子ザルのブラが見えたところでね? 野山へ帰れってくらいなもんで」
焦りすぎてそんなことを言った。口が滑ってブラとか言っちゃったよ。
無反応のマナを恐る恐る見上げると、マナも真っ赤になっていて驚いた。
あの、顔の筋肉死んでるの? ってくらい表情の乏しいマナが。
顔を!赤らめて!! 恥ずかしそうにしている!!!
私は思わず吹き出して笑った。
「風間くんまで真っ赤にさせちゃってごめんね、セクハラだったよね。あはは」
緊張からか私の笑いは収まらず。
マナは呆れた顔をしながらも、ちょっと表情が緩んでいるような。
なんとなくマナに少しだけ近づけたような。真っ赤になるマナなんて誰も観たことなさそうだな、なんて思った。
「ところで、風間くんって保健委員だっけ?」
私のマナ調査によると、マナは確かお花係だったはず。(似合わない)
「うるせーな」
マナはそのあとはちょっと私より前を歩いて、女子更衣室まで一緒に来てくれた。
そして着替えて廊下に出ると、マナは廊下の壁に寄りかかり、スマホをいじっていた。
「あれ? 体育戻らないの?」
「うちのクラス偶数だろ。お前いないと、今更戻っても俺余るんだよ」
ああ、そうかと思いつつ、マナが待っていてくれたことにもう心臓がドクンドクンうるさくてダメだ。
「教室戻る」
マナはさっさと行ってしまう。私は慌ててマナの背中を追いかけた。
教室に戻ると、マナは体育着の上から早業で制服を着て、すぐにまた漫画を読み始めた。
私も座って、甲斐の体育着をたたんだ。
そのあとはほとんど会話らしい会話はしなかったけど、マナの座る方の左半身が熱くて私は参っていた。
「さっき菜月とマナ、授業中二人で歩いてなかった?」
三限の終わりのチャイムが鳴ってすぐに体育着を返しに行くと、甲斐が言った。
ああ、そういえばさっき二人で甲斐の教室のあたり通ったな。
私は甲斐の体育着をめぐってのいきさつを説明した。
「ああ、俺のじゃ菜月にはデカすぎるよな。気がつかなかったわ」
私はマナと二人で過ごせた余韻で、まだ浮かれポンチだった。
「いやでもさ、甲斐に体育着借りたから二人で過ごせたんだよー。ありがと、ありがと」
私はヘラヘラしながら甲斐の腕をバンバン叩く。
甲斐は呆れたようにため息をついた。
「それはいいけど、バレるような態度とらなかっただろうな」
バレ……? ああ、いけない。あまりのことに、誓約書のこと忘れてた。
「たぶ……もちろん!」と、つっかえつつも自信満々に答えたけど、甲斐は疑惑の目で私をジトッと見やる。
「気持ちがバレてるようだったら、マナの好みマジで教えてやらないからな」
「あ! そうだそれ!」
今ききたい! と言いかけたところで、甲斐のクラスの女子と思われる二人が通りかかった。
「甲斐ー。もう体育だよー」
「この子、甲斐の友達? ちっちゃくてかわいいー」
……ちっちゃいは余計ではないかい。
そのままその女子たちが話に加わり、結局マナの好きなタイプは聞き出せなかった。