「これ、盗撮だよな」


「よね」


「これ、使える」


「うん」


「此処は高いセキュリティが謳い文句だろ
それなのに簡単に盗撮されたとなれば」


「徹底的に調べられる」


「共用部分には防犯カメラも設置されているから
金村が捕まるのは時間の問題だと思う」


「良かった」


「昔の“自作自演”の証人として安森さんには連絡してるし、
足を挫いたことに関してはレガーメの守衛に防犯カメラ映像と
此処の最上階に住んでる柴崎総合病院の院長からは昨日ラウンジで見かけたから話を聞いた
ま、それについては守秘義務云々で言わないとしても。ハイヒールを履ける時点で捻挫はないってさ、だからそこを突こうと思う
一番はこの盗撮については犯罪だから許す許さないの域を超えてる」


「ありがとう。風馬」


「ん?」


「高三の時も、今回も
風馬の行動は全部私のためだった
だから・・・ありがとう」


「どういたしまして」


いつもいつも私を気遣ってくれる優しい風馬に
気付いたばかりの気持ちを伝えたい


はやる気持ちを抑えるように一度深く息を吸う


「風馬」


「ん?」


「あのね」


「うん」


真っ直ぐ見上げた風馬の瞳に私が映っていて胸がトクンと跳ねる

早く打つ鼓動が耳まで熱くして、堪らず風馬の手を取った


「棗?」


「手を繋いでいても良い?」


「あ、うん。良いよ」


風馬の大きな手に温もりをもらって勇気が出た


「風馬、好きだよ」


少し震えた小さな声も風馬には届いたようで


「・・・え。ホント?」


いつもより大きく開いた瞳はみるみるうちに涙を溜めた


「うん」


「夢、みたいだ。俺」


そう言った途端に溢れた涙が頬を伝う

その涙を拭うために風馬の手を離そうとすれば
その手を引かれて距離がなくなった


「・・・風馬」


「ありがとう、棗」


「お礼を言うのは私の方だよ」


「ううん俺だよ。ありがとう」