「お、れ、の・・・子、か」










五年振りに会った“元カレ”は

王子様と呼ばれていた頃より幾分爽やかさは減ってはいるものの
あの頃定番だったサラサラの髪は健在

それをかきあげることすら忘れて


ポカンと口を開けたままアホ面を晒した





「違うけど」


「・・・や、待て、だって、その子
どう見ても五歳くらいだろっ??」


「ママぁ、コレだぁれ?」


「んーっと、知らないオジサン」


「ふーん」


知らないオジサンという言葉に興味が消えたのか
繋いだ手をプラプラさせて退屈そうに私を見上げる楓《かえで》


「じゃ、サヨナラ」


「ちょ、待てよっ」


「しらないオジちゃん、バイバーイ」


待てと言う割に元カレは驚愕に動けないようで

待ってあげるほど優しくない私は
簡単に放置してデパートに飛び込むとそのままの勢いでエレベーターに乗った