逃げられたってことは、お断りってことなのだろうか。

涙がにじんできて霞む視界に、 一本の白煙が目の前に立ちのぼるのかぼんやりと見える。

あーあ、でも先輩欲張りだな、やっぱり自分のお願いは叶えて逝くんだ。

それでも、先輩の願いを最期に叶えてあげられたうれしさが勝り、笑いがこみ上げてくる。

透明になってもまだわたしに畏れ(おそれ)の混じった目を向けてくる先輩とわたしだけがいる屋上に、小さな笑い声が広がって、消えた。