愛の栞


さっきの威勢のいいキスとは違い
項垂れる彼の様子が気になった。


自分の口元を袖口で拭った後、

「あんた、そこで何してんの?

よかったら駅まで傘付きで送るけど」


ガックリした様子の彼は
痩せ型で細身、鎖骨が浮き出るほどスタイル抜群だった。


黙って首を振る彼。

今までのナンパ・ストーカーじゃない。と確信した私は彼の腕を引っ張って落とされた傘を取りに行き無理やり傘に入れた。


「大きい傘でしょ。

天気予報で10ミリって聞いたから
黒の、兄の借りたのよ。」