「先輩!近いです!」
慌てて離れようとした私は後ろに転びそうになった。
それを先輩が支えてくれる。
「結子ちゃんは危なっかしいね」
先輩は笑顔で言うけど、もとはと言えば先輩のせいなんだから…!
高校で再会した先輩は、私のことを覚えてはいなかった。
部活で顔を合わせたとき、先輩は“初めまして”と言ったんだ。
それでも出会った日の気持ちは消えることはなくて、今もひたすら片想い。
「飲み物用意するんで、適当に座ってて下さい」
先輩たちをリビングに案内してキッチンに向かう。
「結子ちゃん手伝うよ」
私の後ろで大翔先輩が言った。
「いいですよ、先輩!悪いですから座ってて下さい!」
「いいから、いいから」
本当に先輩は優しいんだから…。
「じゃあ…先輩何飲みますか?」
「俺、ココアがいいな。ある?」
「ありますよ。永峰先輩も同じで大丈夫ですかね?」
私が聞くと、大翔先輩は頷いた。
マグカップにココアの粉を入れてポットのお湯を注ぐ。
それをスプーンでかき混ぜながら先輩の顔を覗いた。
やっぱりカッコいいな…。


