毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

「んだよ、新しい男が出来たなら言え! てか、先に浮気したのは遥じゃねぇの? 峯岸斗真の関係者ってステイタスに靡いたんだろうが!」

 結人さんに関しては負け惜しみでしかない発言内容。けれど私に対して有効である。そう邪推されても仕方がない。

 私は結人さんの隣へ移動し、隆史と真正面から向き合う。

「私は逆に結人さんがヒロインシューズに勤めてなければいいのにって思った。そうしたら私でも想えるから。でも……違ったの。結人さんが築き上げた現在を否定したくない」

 結人さんは長谷川君や隆史との繋がりを完全否定しなかった。
 だから私も。

「私は結人さんに惹かれてる。隆史とは終わったの」

「お前なんかがつり合うと思ってる訳?」

「隆史が言ったじゃない? 私が真面目だって。私もそれが取り柄だと開き直って、頑張るしかないよね」

 告げた瞬間、結人さんから強く握ってくれる。私はフードの中で涙を滲ませ、鼻を啜った。

「2人の世界って訳ね、ちっ! アホらしいな」

 隆史が吐き捨てて去っていく。

「Non voglio vederti mai più」

 もう追い掛ける事のない背中を見送る中、結人さんが爽やかに言う。

「……それ、長谷川君にも言ってましたよね?」

「お元気で』という意味のイタリア語ですよ。それより赤ずきんちゃん。ワインとチーズを持ってホテルに来てください」

 ニッコリ微笑む結人さん。青味がかる瞳が悪戯に輝いている。