毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

 代表取締役と秘書とのコミュニケーションとは思えない。むきになる結人さんが新鮮だ。

「『女性の言葉を額面通り受け取ってはいけない』とは親友からの忠告なんだが、葛城にも教えてやろう」

「……うるさいです」

 峯岸さんがふいに私を見る。

「こちらへ来ることがあれば美味しいイタリア料理をご馳走しよう。妻も一緒に4人でね。楽しみにしているよ」

 軽く手を上げ、指輪を光らせた。それから席に乗り込むと颯爽に走らせていく。

「ったく、あの人は」

 結人さんはブツブツ言いつつ、隆史の前へ立つ。肩を抱かれたままの姿勢を無言で引き剥がし、私を背後へ回した。

「峯岸斗真……本物かよ?」

「偽物だろうと、あんな人が2人も居たなら私の身が持ちません。それはそうと遥さんとお付き合いしているのは本当ですか? 聞いた話によれば元恋人は他の女性とも交際していたと?」

「い、いや、それはさ」

 言い淀む隆史。結人さんの迫力に圧されている。

「ーー昨日のシェフといい、私は何処まで嫉妬心を試されるのでしょう。遥さんを好きな男、遥さんが好きだった男を悪く言いたくありませんが、はぁ、どうして揃いもそろって」

 結人さんが呆れて首を横に振り、私は彼の上着の裾を掴む。

「す、すいません」

「この男を物理的に追い払った後、心の中からも追い出して差し上げます。覚悟しなさい」

 重ねられる指が熱い。なにより私を包み込むくらい優しかった。