毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

「赤ずきん? は、何、警察って? 遥の知り合い? 俺達は乱暴なんかしてないよな?」

 隆史は私の肩を抱き、誤魔化す。私に否定する間を与えず、滑らかな言い訳を語り始めた。

「遥は彼女、恋人。少し言い争いをしただけで通報するとか大袈裟でしょ」

「……」

「そっちこそ路上駐車していいの? 警察呼んじゃうよ」

 スーツ姿の結人さんは乗ってきた車へ視線を流す。車はエンジンが掛けられたままで、後部座席には気配がある。スモークが貼られた窓を暫し伺うとドアが開く。

「デートの口実として借り出されたと思えばーー灯台下暗しって話だな」

 同じくスーツを着た男性が降りてくる。

「あ、なたはーー峯岸斗真、さん?」

「ん? 俺を知っていてくれたんだ? 秘書がお世話になってるね、赤ずきんちゃん」

 満面の微笑みを向けられ、呆気にとられた。テレビに映っていた有名人は気取ることなく存在感を放つ。

「葛城も俺も休暇中なんだが、仕事のついでに赤ずきんちゃんの家へ向かう途中だったんだよ」

「斗真さん!」

 結人さんが大股で峯岸さんに近付き、運転席へ押し込もうとする。ただ峯岸さんの方が体格がよく、なかなか収まらない。

「斗真さんは用済みです。さっさと奥様とお食事に行かれたらどうですか?」

「あはは、用済みって酷いな。秘書が言う言葉じゃないぞ」

「今は勤務時間外なのでいいんですよ」