毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

「っーー!!」

 私は衝突の衝撃で尻もちをつく。にも関わらず期待に満ちた顔で見上げられた相手はさぞかし気味が悪かっただろう。

「ちっ、危ねぇぞ」

 苛立ちを吐き出すとフードを叩かれた。

「……遥?」

 それから私の名を呼ぶ。

「隆史」

 狼は狼でも元彼の隆史と行き合ってしまう。向こうは私だと確信すると、ますます不機嫌になる。

「こんなところで何やってるんだ? フードなんて被ってたら前が見えないだろうが?」

「ご、ごめんなさい」

 隆史の怒りは最もであり、素直に謝罪の言葉が出てきた。結人さんの時はすかさず手を差し伸べてくれ怪我の有無を確認してくれたが、あれはレアケースなのだと思い知る。

「いいから、さっさと立てよ。みっともない」

 周りの目を気にしつつ言う。隆史の鋭い視線で全身を突き刺され、急いで立ち上がった。

「髪、切ったんだ? まさか失恋したからとか?」

「……」

「無職だろ? こんな所で何してるんだよ?」

「……」

「無視かよ! 遥かとはもう会う事は無いと思ってたんがな」

 世間話に応じる義理もないので沈黙で返す。私だって隆史とこんな場所で遭遇するとは考えていなかった。ぶつかっておいてだが、謝罪を求めたいのは私の方だろう。

 しかし今はそんな事はどうでも良くて。