毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

 ラジオでは本日の乙女座の運勢が昨日に引き続き、1位と伝える。ラッキーアイテムはカルボナーラ。アクアパッツァといい、もしかしてイタリア料理に幸運があるのだろうか。この際、ケーキと共にイタリア料理を作ってみてもいいかもしれない。
 結人さんは好きなメニューは何だろう?

 結局、結人さんに結び付く行動と思考に気が付く。
 ーーあぁ、そうか。私は口実を欲しがっている。彼と街角でぶつかった偶然を再現したいんだ。ただ現実問題、それは不可能である。

 長く伸ばした髪をばっさり切ったのだって、重たい気持ちに引っ張られたくなかったからなのに。いつまでも後ろ向きの思考に囚われたまま。

 それでいいの?

 このままでいいの?

 辛くなれば諦め、逃げて、自分には分不相応だと折り合いをつけるのが癖になっていない?

『たった一人に愛されなかっただけで遥さんの価値は損なわれませんから。すぐに恋人を忘れなさいとは言いませんが、卑下せず前を見て? 何が見えます?』

 これは結人さんの言葉。たった一人が結人さんならば話は違うだろう。仮に彼以外の大勢に好かれても、私には無意味なのだから。

 立ち止まり、顔を上げる。行き交う通行人はこちらへ意識など向けない。
 自信がなく、何事も中途半端な自分が嫌いだった。自己肯定感をわざと低くして傷付かないようにしていただけ。

 ーー私、変わりたい。

 強く願った時、視界がひらけた気がし、背中を押すみたいな風が吹く。私は来た道を駆け戻る。


 新しい恋に出会った。

 けれど怖くて逃げ出した。

 パーカのフードを被ったまま走った。

 ーーそして狼とぶつかった。