毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

 持論だが食生活は生活環境に直結する。言った通り、セレブな結人さんと味覚が合うと思わない。美味しいと言って貰う度、エチケットとして言ってるんじゃないかと感じる。

「……片付けたら帰りますね」

「洗い物は私がやるとお伝えしましたよ。それより貴女のご機嫌を直すのが先です。遥さんの料理は美味しかった、本当です。仕事の考え事ではありませんが、思考を巡らせながら食事をしてしまったのも本当。申し訳ありませんでした」

 どうすれば許してくれますか? 青味がかる瞳に訴えられた。
 結人さんはいとも簡単に私へ歩み寄るも、私から結人さんは遠いのだ。

 仮に自分がして欲しかった行動を伝え、改めて貰えばこの距離が縮む? ううん、縮まない。それどころか、ますますスマートに振る舞う結人さんに胸が詰まるだけだろう。

「こちらこそ雰囲気を悪くしてすいません」 

 視線を合わないで、ペコリと頭を下げる。

「そうではなくて。私は貴女の不満を解消したいのです。遠慮せず仰って下さい」

「遠慮?」

「はい、遥さんに我慢をさせたくありません。もっと言えば嫌われたくないので」

 彼は心の距離を物理的に詰めてきて、私の前で胸に手を当てた。

「でしたら結人さんこそ遠慮しないで買い出しの時、ほうれん草が苦手と言って下さい!」

「貴女が楽しそうに選んでいるのを邪魔したくなかったのです。食材の説明をしているのを聞いていたかった」

 図星をついたようで、首筋を掻く。

「食べるつもりのない材料を買うなんて、もったいないじゃないですか!」

「ーーもったいない? あ、あぁ、確かにそうですよね。今からそちらを頂きます」