毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

 私は手付かずの小鉢を引き取り、明るくそれ以上の感想を拒む。
 そうか、ほうれん草は苦手だったのかもしれない。その他は完食してくれたのでよしとしよう。

「は、遥さん、私は別に腹を膨らます為に料理をお願いしたのではなく」

 食卓を片付け始めると結人さんがフォローに回る。

「いいんです! お仕事忙しいんですよね? 結果的にホテルで食べられて良かったと思いますよ」

「仕事はーーえぇ、トラブルに見舞われていますが、手料理は美味しかったです」

「でも上の空でした。私がお刺身や天ぷらの方が良かったか聞いても、パスタやピザにすれば良かったか聞いても無言で食べてましたよね?」

「私は貴女が作ってくれるなら、どのようなメニューでも良いと最初に言いましたよ?」

「おひたしを残してますが?」

「そ、それは……」

「いいんですって。誰にでも好き嫌いはありますから」

 もっと和やかに食事が出来ると勝手に思い込んだだけ。仕事に意識を取られても仕方がない。

「すいませんでした。しかし刺し身や天ぷら、パスタやピザより、貴女の作ったものが良かったです」

「結人さんにはそういう豪華な食事の方がお似合いだと思いますけどね。私が作るありきたりな料理より」

「ーーどういう意味でしょう?」

 形の良い眉が釣り上がる。私は小鉢へ視線を落としたまま答えた。

「こんなお城みたいな部屋を借りられる人と味覚が合うはずないんですよ。それに気付いたら結人さんが違う世界の住人に見えてきて、わたしなんかと食卓を囲める人じゃないというか」