毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい



「えっと、ご飯と焼き鮭、出汁巻きたまご、大根のお味噌汁です。あとほうれん草のおひたしも作ってみました」

 THE和食とも言えるメニューを結人さんの前へ並べる。簡易キッチンと聞いたが、私のアパートより設備が充実しており、最新の家電が揃いホームパーティーも出来そう。

 明らかに数名用のダイニングテーブルに手料理がぽつんと置かれ、なんだか物足りなさを漂わせる。

「お惣菜を買ってきましょうか? 品数が少ないですよね?」

「いや、全然。充分です。こんな短時間で作れるなんて普段から自炊しているんですか?」

「ま、まぁ、外食ばかりだとお金も掛かりますし」

「とても美味しそうです」

 結人さんの滞在する部屋はこれまたアパートより間取りが広い。さしずめ私は料理を作りに来た家政婦みたいな心境になっていた。
 一応、2人前を作ったがこのままお暇したいくらいだ。
 おいそれと場違いな所に来てしまった。

「どうかしました?」

「あ、いや、なんか家政婦みたいだなぁと」

 温かいお茶をそっと差し出す。
 先日、彼が緑茶を飲みたいと希望したところ、コンシェルジュが手配をしたらしいーー当然、最高級を。
 それに湯呑みや急須も間違いなく名品のはず。調理器具、食器だって当たり前に高価だろう。どれも扱いに神経を擦り減らして、こんなに広い空間なのに身の置き場がない。

「貴女を家政婦扱いしたつもりはありませんが、料理をお手伝いしなくて申し訳ありません」

 結人さんはハッとした顔で謝ってくれる。

「あ、いやいや、そういう意味ではなくて!」

「洗い物は私にやらせて下さいね」

 言うと立ち上がり、私の分を向かいの席に置いた。それから椅子を引いて座らせてくれる。