毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

 くいっと袖口を掴まれる。結人さんの顔には『もう行きましょう』と分かりやすく書いてあった。
 確かにこのまま話していても仕方がない、か。

「あ、青木! 俺はーー」

「じゃあ、これで僕達は失礼しますね。さようなら」

 痺れを切らした様子に焦り、私は頭を下げる。パクパクと口を動かして言いたげ気な彼へ結人さんがニッコリ微笑む。

「Non voglio vederti mai più」
 



「それで、と」

 仕切り直す言葉は先程を引きずってはいないようだ。

「す、すいませんでした」

「もう謝るのは止めましょう。それより有意義な時間を過ごしたいです」

「有意義、ですか? 次のお店の候補はーー」

 言い掛け、かぶりを振られる。

「ここは遥さんに作って頂くというのは?」

「え?」

「滞在ホテルに簡易ですがキッチンがあります。丁度この先に食材を調達出来そうな所が」

 前方の高級スーパーの看板を指し示す。唐突に手料理を食べたいと希望されたら、あたふたするのは当たり前だ。

「いやいや、無理ですって」

「私は長谷川氏より遥さんの料理が食べたいです」

 全力で拒む。結人さんへピックアップした長谷川君の店達は高い評価を得ていて、私の腕前と比べるのも失礼である。

「そう言われても……」

「私は食事は何を食べるより誰と食べるかだと考えます。別にファストフードでもいいんです、貴女と食べられたら」