毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい



「えっ? 予約が入っているはずですが?」

 美術館から徒歩圏内のレストランへ。閑静な住宅街に構えた店舗は隠れ家的な趣きがあり、辺りに良い香りが漂う。

 久しぶりに味わえる仲間の料理に期待値が上がっていたのだけど。

「恐れ入りますが、青木様のお席のご用意はございません」

 受付で名前を告げると案内が出来ないと断られる。世界的なグルメガイド本に掲載されるだけあってランチタイムも満席、厨房の慌ただしさが漏れ伝わった。

「あ、あの長谷川君には了承を得ているんです」

「ですから長谷川は承知していないと……」

「長谷川君と話は出来ませんか?」

「生憎、手が離せなくて。申し訳ありません」

 メールの文面を見せてもこの反応。それでも食い下がる私を見兼ね、結人さんが発言する。

「ここで押し問答しても他のお客さんに迷惑ですよ。外に出ましょうか」

 冷静に退店を促された。諦めきれず店内を見回せば料理の説明をする長谷川君と目が合う。修業時代とは違い、貫禄が出た姿に息を飲む。
 と、彼は表情で語った。

『本当に来たんだな』

 そう呆れ、迷惑だと眉を顰めるのだ。私は約束を反故にされ、頭の中が真っ白になってしまう。

「行きましょう」

「で、でも」

「ここに居ても仕方ありませんから」

「ですが!」

「ほら、いいから出ますよ」

 結人さんは踵を返し、急いで後を追う。