毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

「……それは慰めて欲しいのでしょうか?」

 やや間があり、結人さんの声音は低かった。

「あ、え、っと、そういう訳じゃなくて。はは、やっぱりつまらないですね、すいません」

「言いたい事を言えない関係は恋人でなくとも長くは付き合えません。心変わりは致し方ないとしても、同時進行で交際するのはマナー違反でしょう。つまり私が言いたいのはーー」

 ここで言葉を切って私を見詰めてきた。

 青味がかる瞳が緩やかに細められて。

「たった一人に愛されなかっただけで遥さんの価値は損なわれませんから。すぐに恋人を忘れなさいとは言いませんが、卑下せず前を見て? 何が見えます?」

「……何って? 結人さんですけど。意地悪そうに笑ってます」

「はは、意地悪そうではなく意地悪を言ってるんです」

「どうしてですか? お祖母様の遺言で女性に優しくするんじゃ?」

「はは、デート中に他の男の名前を出す方に優しくなんてしませんよ」

 安っぽい同情はしないという訳、か。納得した。それから安心もした。

 それこそ、結人さんならば傷付いた相手を慰めるのは上手だろう。歯の浮くような台詞で夢見心地にしてくれる。

 でも……。

「変に同情されたり慰められなくて良かったかもしれませんね」

「弱った心に付け入らないとは言ってませんので油断は禁物ですよ。じゃあ、昼食にしましょう」

「そうですね」

 対等な関係にはなれないと思うのに、肩を並べて歩けるのが嬉しい。