毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

「困りましたね。もう気にしないで下さいとお願いしても、貴女は罪悪感を抱き続けるでしょうしーー」

 そうだ、結人さんが芝居じみた仕草で手を叩く。

「先程、ミュージアムショップで見掛けた品をプレゼントしてくれませんか?」

「え? はい……いいですけど?」

 主に来館の記念品を扱うショップに形見の懐中時計と同等の商品が扱われているとは思えず、傾げる。

「ありがとうございます。さっそく参りましょう」

 急かされ絵葉書コーナーの前までやってきた。
 葉書の他、時計のレプリカやTシャツ等の品揃えがある中、彼は陳列棚をくるくる回す。

「絵葉書を一枚買って、そこに貴女の住所を書いて下さい。イタリアに戻ったら必ず便りを出します。リペアがどうなったかをお知らせます」

 思い付きにしろ、これはかなり配慮された申し出である。葉書きを選んで欲しいとも付け加えられて、先程鑑賞した懐中時計がプリントされたものを迷わず購入。その場で宛名を記入した。

「女性を口説く際に聞き出すのが一番難しい項目が何か分かりますか?」

 上着のポケットへ葉書きをしまい、結人さんが勝ち誇った顔をした。なんとなく何を言われるか察知したけれど、会話に付き合いたい気分にさせられる。

「難しい? 年齢ですか?」

「確かに年齢は聞き難いですね。まぁ、私は貴女が未成年でなければ構いませんよ。正解は住所でした」

「いちいち大袈裟です。聞かれれば答えました。昨日の時点で免許証を見せるって言いましたよ?」

「それは私にぶつかった為、身分を明かす必要があると考えたのでしょう? そんな風に聞き出しても面白くないです」