毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい



 場所は代わり美術館。世界中から希少な時計を集め展示しているとあって、平日でもそれなりの人数が鑑賞していた。

「結人さんは時計がお好きですか?」

「装飾品という面での拘りはありませんが、仕事柄、必需品ですね」

 袖を少し捲くり、見せてくれる。懐中時計とは別に腕時計を持っている様だ。
 ブランド品に明るくないので、その時計が何処の物か判断つかないけれどよく似合っていると思う。薄手のニットにデニムというシンプルな装いに馴染み、大人のオシャレを演出する。

「秘書のお仕事は好きですか?」

「……先程から〇〇(まるまる)は好きですか? と聞いてばかりですよ? 白黒つけられない事もあります」

「す、すいません」

 彼を連れてきたは良いものの時計について知識がなく、つい立ち入った質問をしてしまい反省する。
 
「別に怒っているのではありません。変に気を回して頂かなくても結構です」

 謝罪すれば声音は途端に柔らかくなり、ショーケースへ入れられた懐中時計を見詰め、私にも見るよう促す。

「あっ、身長、高いですね。私も割と高いんですけど」

 隣に並ぶと彼の高身長に気付き、結人さんがこちらの足元を見た。

「ヒールをお召にならないのはその為ですか? 女性の足が最も美しく見えるヒールの高さは7センチらしいですよ。もちろん強要はしませんが、ヒールを履いた貴女はもっと魅力的に映るでしょう」

 流石、ヒロインシューズに勤めているだけある。セールストークが板に付く。

「あはは、そんな高いヒールを履いたら電車のつり革にぶつかったりしちゃいますし。大女だって笑われちゃいます! 本当は履いてみたいんですが」

「ふむ」

 いったん、唸り考える結人さん。

「好きな靴を履いてバカにされるようならば教えて下さい。あぁ、靴だけでなく服や髪型もです。貴女をバカにされたと想像しただけで不愉快になりました」