毒舌オオカミ秘書は赤ずきんちゃんを口説きたい

 結人さんの反応をみ、頼み込んだ甲斐があったと心の中でガッツポーズをする。

 本当は修行仲間であるのを利用して席を用意させるのは嫌だが、きっと彼の料理ならば結人さんを満足させられる。
 結人さんに美味しい和食を食べさせたいとの願いはなんとか聞き入れられたのだ。

「……はぁ、おバカさんですね。昨夜は寝不足なのでは?」

「分かります? 調べ始めると夢中になってしまうんです。もっと良い案はないか、気になると止まらなくて」

「適当に切り上げればいいものを。バカですよ、バカ」

 もう一度言われる。どうしてだろう、歯の浮くような台詞を伝えられるよりも『バカ』と呆れられる方が照れてしまう。

「何故、赤くなるんです? 褒めていません、呆れているんですが?」

「分かってます。私が寝ていないのを遠回しに心配してくれているのかなぁと。だったら嬉しいなって」

「……いやいや、全然分かってらっしゃいませんね」

 こんな素直じゃない言い回しの方が彼らしい気がして、頬がますます熱くなる。

「なるほど、遥さんは特殊な癖(へき)をお持ちなんですね。貴女はなじられ、罵られるのがお好きとーー承知しました。ご期待に添えるよう善処します」

 結人さんはニッコリ笑うのだった。