さきとはるといる時間が減っていた。
 どちらかというと、別の友達といることのほうが多かった。
 次第にさきとはるの悪口はエスカレートしていった。

 あ、さきだ。
 話しかけに行こっ!
 
 「ねぇ、はゆ」
 「はゆも思うでしょ?」
 「あいつら、いい子ぶっているよね笑」
 「自分がかわいいって思ってる笑」
 え?
 こんなに近くにさきがいるのに……

 「ね!はゆ!はゆもそう思うでしょ?」
 「だよね……」
 愛想笑いをして、小さな声で相づちを打った。
 
 傷ついた顔をしたさきがいた。

 その瞬間、私は頭が真っ白になった。
 その表情に、何も動けなかった。
 
 (声をかけなきゃ……でも、なんて?)
 「大丈夫?」なんてかけるなんてできない。

 (それなのに、今さら、いい顔なんて……)
 自分が標的になることが怖くて、知らない顔していたくせに。
 
 いつまでこんなこと続ければいいの?
 いつになったら終わるの?
 さきを傷つけたくせに、まだ自分を守ろうとしている。

 (こんな自分、大嫌い、きらい、きらい……)

 どうしてこんなに弱いのだろう。

 臆病者。
 卑怯者。

 弱くて、怖くて、逃げる。