「どどど、どうしよう⋯!」


その夜。私は全身鏡の前でまたもや葛藤していた。


「ねえおば様!ヴィルってどんなのが好みだと思う?!」


「さすがに、そこまでは把握してないですね⋯」


目を細めて、困ったように頬に手を当てる。


そりゃそうだ。


むしろ、従業員のそういう所まで把握していたらもう気持ち悪いまである。


少し申し訳ない気持ちと、早く洋服を決めないといけない焦りが心にうまれる。


「⋯でも、無難にワンピースの方がいいと思いますよ。変に凝ったお洋服よりも」


⋯確かに。


おば様が言うのだから信憑性はあり過ぎる。


結局、大きなリボンが目立つ紺のニットワンピースに決定した。


ヴィルも準備をしているのか、その夜は挨拶をしに来なかった。


「⋯ヴィル、来ないね」


「そうですね。⋯明日、楽しみですね」


「はあっ、やっぱ緊張してきた。どうしよう」


私が焦って言うと、彼女は慰めるように私の頬に手を当てて言った。


「お嬢様なら大丈夫ですよ。応援しています」


にこりと笑って、おば様は部屋を出て行った。