「秋、私は別に何もされてないよ」

秋の怒りを鎮めようと、私はそう言ったが、


「弥生がそうやって言うのがおかしいんだよ」

逆にもっと怒り出した。


「あのさぁ、あんたマジでウザいんだけど!弥生もうざいし」


マリアが本性を秋に出した。そして、秋を指差し、


「あんたもウザすぎ!なんで弥生を庇うのかマジで意味わかんないんだけど!格好いいから彼氏にしてあげようとしてるのにさぁ、なんでそんな女男を庇うわけ⁉︎」


私は初めの頃、男の制服で学校に行っていた時期があった。その頃に、マリアは私に惚れたらしい。私を好きになってくれた人なら、認めてくれるかもしれない、なんて考えた。でも、そんな考え甘かった。マリアは私を軽蔑した。


「この際だから言ってやるよ」


秋が挑発的にマリアにそう言った。


「秋、もしかして言うの⁉︎ダメだよ!」


「何?弥生は知ってて、私にはわからないことを教えてくれるの?教えてよ」


秋は頭に血が上っている。私のためなんかにこの学校の中での人生を投げ出そうとしている。


「俺、ホントは女だから。弥生と同じでトランスジェンダー。女で生まれて、実際の性別は男ってこと」


言ってしまった。マリアは、目を見開いて


「私はつくづく運がないわね」


そう言って笑った。その笑顔はとても綺麗だった。