ガブッ

「っ痛ぁああっ?!」

ズキズキと痛む鼻を押さえながら、ベッドから飛び起きる。

「わた!噛んじゃダメって言ってるでしょー?!」

わたは「やっと起きたか」みたいなドヤ顔でこちらを見ている。

「ぅう...いま何時...?」

枕元のスマホを手に取る。

────7時12分

「うっそ...まだ7時...」

「ニャッ!」

「いやあの、まだ7時...」

「ニャイッ!」

「わた、土日くらい寝坊さs...」

「ニャァアアッ!!」

わたはどうしても私を起こしたいようだ。

「なによー?虫でも居たのー?」

「ニャァ」

「分かったから、起きる、起きるよぉ。」

ト、ト、ト、

わたを抱いて階段を下りる。

「ご飯あるじゃんっ!」

「ニャアニャ」

ご飯よこせのニャーニャーコールかと思えば、ご飯皿の中にはたっぷりのカリカリ。

「水あるよ?」

「ニャア」

「...遊ぶ?」

「ゥニャアア」

遊ぶ気分ではないらしい。

「うぅ...猫心全く分からん...。」

「ニャン」

「...ついてこいって?」

わたは私を先導するかのように前を歩く。

「えぇ...」

たどり着いた先は、玄関。

「何がしたいのよ...?」

「ニャッ!」

外へ出たい!
とでも言いたげな目で見てきた。

「いや自分で出ればいいじゃん。」

普段わたは、玄関にある猫専用の小さな隠しドアから家を出入りしている。

外からも内からも模様と一体化していて、初見じゃ見破れない。

防犯やわたのためを思って両親がつけてくれたものだ。

「ついてきてほしいの?」

「ニャアン!」

どうやら私についてきて欲しいようだ。

「あー分かった。でもせめて服は着させて...」

んーっ、と伸びをする。

2階へ上がりクローゼットから服を引っ張り出す。

いつも着ている、ゆるい猫のイラストが入った白パーカー+淡いピンクのシンプルな模様が入った黒の半ズボン。

お気に入りだ。

究極の暑がりの私は夏でも冬でも基本半袖である。

「ニャアニャッ!」

「分かった分かった。ちょい待ちー。」

急かすわたを抱き上げ、ドアを開けた。